著者
志賀 文哉
出版者
富山大学人間発達科学部発達教育学科発達福祉コース
雑誌
とやま発達福祉学年報 (ISSN:21850801)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.15-20, 2017-05-31

生活困窮者等に対する就労支援に関し現状と課題を示した。本稿では生活保護とその他施策での就労支援をともに扱い、雇用制度そのものの課題や今後の就労に係る潜在的な課題にも言及した。就労支援は多様化し充実化しているところもあるが、支援そのものや雇用の本質や形態の変化には課題が散在しており、そのような現状に沿う支援の実践が求められる。
著者
志賀 文哉
出版者
富山大学人間発達科学部発達教育学科発達福祉コース
雑誌
とやま発達福祉学年報 (ISSN:21850801)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.13-20, 2019-05

こども食堂は全国に広がり、様々な背景や実施方法が用いられ約3500にもなっている。こども食堂は「食」を提供するものであるが、対象は多様であり、そのための営みや学習支援等の付加的な活動を通じて交流を創り、居場所を形成している。人間浴と呼ばれる人の交流や関係の構築は「安全でありかつ安心できる」場所を創出しているのである。子ども食堂の課題は資金面や人材面の不十分さのほか、期待通りの参加を得ることのむずかしさ、また給食の実施を含め、食自体の質を向上するためのアクションが不足していることなどがある。これらの活動にソーシャルワークが貢献する可能性があり、従来の地域福祉と家庭福祉のアプローチをつなぐ「まちの子どもソーシャルワーク」の提唱がなされている。人口減少の社会において、こども食堂の活動が地域の拠点となる可能性がある。
著者
志賀 文哉
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 = Memoirs of the Faculty of Human Development University of Toyama (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.141-149, 2020-03-19

本研究の目的は孤立化しやすい高齢の生活困窮者の社会的な居場所を設けることの意義や課題について明らかにすることである。研究対象者が集う場所を設け交流するカフェ型活動を展開し,相互の結びつきを形成するものとした。質的な調査内容からは主に日常的に話す機会が限られている調査対象者らがこの場を通して会話を楽しむ機会を得ており,当事者同士の関わりの意義や必要性が示される一方,継続的な参加には課題がみられた。高齢生活困窮者らの孤立化を防ぐためには,独居のリスクの軽減や社会的居場所の確保を検討する必要がある。
著者
志賀 文哉
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.137-140, 2015

2013年12月生活困窮者自立支援法が公布され,2015年4月から施行されることになっている。本法は子どもの貧困対策法および生活保護法改正と合わせ,日本における現代の貧困状況の深刻さを示すものである。「自立相談支援事業」と「住居確保給付金の支給」を必須事業としながら,就労準備支援や子どもへの学習支援を任意事業として含めるなど,生活保護法や子どもの貧困対策法から求められる支援に関連する設計が示されている。このような骨子部分が定められるためには,これまで法律が定められる前から取り組まれてきた国や自治体の取り組み等を振り返り,「生活困窮者」にとって必要な支援のあり方を模索してきた経緯がある。本稿では,来年度の施行に向けて準備が進められる生活困窮者支援の現状と課題について,これまでの取り組みとの関連にも触れながら述べる。
著者
志賀 文哉
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.165-175, 2002-08-31 (Released:2018-07-20)

本稿は身体障害に関するスティグマについて,その意味や形成の過程,さまざまな諸相を検証し,それを払拭する術を見いだそうとするものである。スティグマ研究はGoffman以来さまざまに試みられてきており,「ラベル化」や「社会的逸脱」とういう現象をとおして身体障害をもつ者は社会との関係を断たれることがわかってきている。また,周囲の人たちも「名目的スティグマ」を被ることがある。身体機能の不全に関するスティグマの形成過程は従来のよく知られたWHO障害分類(機能障害,能力障害,社会的不利)を内包する。筆者のハンセン病研究では自宅遠方の療養所を選択して移住したケースがみられ,スティグマのさまざまな諸相のなかでもネガティブな影響力が推し量られる。スティグマを克服する方法としてはWHOの新たな障害分類を考慮しながら科学的知識普及の努力,人権思想の確立,社会保障の拡充などを検討することが重要であり効果的である。
著者
志賀 文哉
出版者
富山大学人間発達科学部発達教育学科発達福祉コース
雑誌
とやま発達福祉学年報 (ISSN:21850801)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.11-16, 2013-05

本稿の目的は、支援の中にある当事者やそれに深く関係するニーズについて捉え、支援と当事者性について考察することである。個別ニーズの存在をもとに支援を行うことは支援-被支援関係で一般的であるが、その「個別ニーズ視点」におけるニーズは支援者も強くかかわるものであり、被支援者にのみ存在するのではなく、また被支援者の「主体性」「強さ」を規定してきたのは支援者である。一方、「当事者主権」が示す自己決定権に裏打ちされた権利主体としての当事者は「ニーズの帰属する主体」であり、「承認ニーズ」は本人を基点として認められたニーズである。支援-被支援の協働においても双方向的に関係はあり、支援-被支援におけるラポールの形成・相互理解はニーズを把握する上で重要である。意思決定にかかる支援において支援者は決定に参画することに共生の形が見出される。支援-被支援関係は相互に欠くべからざる関係として展開されること、その中でこそ当事者の意思・ニーズを確認し尊重していくことができること、それは権利擁護や共に生きていく土壌を拓くものである。
著者
志賀 文哉
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 = Memoirs of the Faculty of Human Development University of Toyama (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.99-103, 2016-10-25

2011年3月の東日本大震災から既に5年以上が過ぎ,復興のプロセスとしては「集中復興期」から「復興・創生期間」へと移行している。「創生」の言葉には,高台移転や災害公営住宅建設を着実に進めることや福島県における帰還困難区域以外での避難指示解除を進めることなど,次の段階すなわち復興後の自立した地域を形作ることが含まれている。しかし,2015年3月現在においても高台移転が予定の半分も進んでおらず災害公営住宅も6割程度の見込みである状況から大きく前進することは難しいと考えられる(復興庁,2016)。移転や建設が可能なところはすでに着手するか完了しており,復興にかかる助成も大きく減らされるためである。また地域の自立が求められるなかで,被災地にとどまった若年層も仕事や新しい生活を求め,これを機に域外に流出することが懸念されるため,応急仮設住宅から出た後に地域にとどまる人は高齢者が中心になることも考えられる。震災前とは大きく異なる地域に居続ける人たちの健康状態や今後の希望とそれに対応する国や行政の支援のあり方に関心が寄せられている。本調査では,応急仮設住宅から災害公営住宅他の住居への転居が本格化する,震災後4年目~5年目に応急仮設住宅で生活している人を対象に,ストレス対処力および現在の暮らしぶりを調べ,その現状を明らかにするとともに,結果内容を行政と共有し今後の効果的な対応に活用してもらうものとした。