著者
武田 尚子
出版者
武蔵社会学会
雑誌
武蔵社会学論集 : ソシオロジスト : Journal of the Musashi Sociological Society (ISSN:13446827)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.15, pp.47-94, 2013-03-22

本稿は,イギリスのB.S.ロウントリーが1836年に着手した第二次ヨーク貧困調査の特徴と意義について探る。B.S.ロウントリーは第一次ヨーク貧困調査(1899年)で,絶対的貧困(第1次貧困=貧困線以下の身体的・生理的維持が不可能な貧困)概念を提示したが,「絶対的貧困」の境界線を貧困線とすることに拘泥し続けたわけではない。第二次ヨーク貧困調査では,「余裕費」を組み込んだ「人間的必要基準」という概念を示し,「人間的必要基準」線を境界線にした。このアイデアはベヴァリッジに影響を与え,1942 年12 月に公表されたベヴァリッジ委員会による『社会保険とサービスに関する報告書』(ベヴァリッジ・レポート)の最低生活費の算定に反映された。「ベヴァリッジ・レポート」の理念は第二次大戦後,国家による社会保障制度の整備につながってゆくが,初期の成果として挙げられるのが家族手当である。B.S. ロウントリーは,第二次ヨーク貧困調査の知見に基づき,家族手当の実現に尽力した一人であった。

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