- 著者
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井手 秀樹
- 出版者
- 慶應義塾大学出版会
- 雑誌
- 三田商学研究 (ISSN:0544571X)
- 巻号頁・発行日
- vol.55, no.5, pp.41-56, 2012-12
論文①平成21年の「特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法」(以下「特措法」という)は, その制定の経緯に照らし, 需給調整規制(台数規制)を予定したものであるか。結論「特措法は需給調整規制を予定したものではない。」 特措法は車両台数の増加に関する事業計画の認可基準について, 「輸送の安全を確保するもの」, 「適切な計画」, 「適格に遂行するに足る能力」という要件を定めたものである。増車認可では, これらの要件を満たしているかどうかで判断される。収支計画上の増車車両分の営業収入が, 営業区域における「新たに発生する輸送需要」であることを増車認可申請者が証明しなければならないということは, 輸送需要に対して適切な車両数を算出し, それにより増車を認否するという需給調整規制に他ならず, かかる規制は特措法の下で許されるものではない。②タクシー事業において需給調整規制をすることは規制の在り方として合理的か。需給調整規制により, タクシー業界の諸問題は解決するか。結論「タクシー事業において, 台数規制をすることは, 規制の在り方として合理的ではない。」特措法施行の背景には, タクシー車両の増加に伴い, タクシー運転者の待遇の悪化, 安全性・サービスの低下等の懸念が指摘されているが, 論点2, 3で述べるとおり, データを見る限りではその根拠は希薄である。参入・増車抑制により安全性の確保, タクシー運転者の待遇等の問題を解決するという考え方には疑問があると言わざるを得ない。