- 著者
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マーハ ジョン C.
- 出版者
- 国際基督教大学
- 雑誌
- 国際基督教大学学報. I-A 教育研究 = Educational Studies (ISSN:04523318)
- 巻号頁・発行日
- vol.53, pp.117-123, 2011-03-31
あだ名とは、個人に属する名前の代わりとして、もしくは、個人の名前に付け加える形で、個人を特定する参照表現である。それは新しい分類化である。名前を作り出す方法が存在する。あだ名は語彙を増やす。あだ名とは、他人の先入観や、性的、人種的ステレオタオプや、集団の規範の強化などを明らかにする。あだ名とは、社会管理の一つの形である。あだ名は、同族意識と集団の連帯感覚、つまり団結心を強めることができる。あだ名はしばしば、社会的、言語的な行動に影響を与える。個人は、あだ名を持つことにより、自分の行動の特徴や、話すアクセントや体型や日常の習慣を変えようとすることがある。同じ集団にいる人々を特定し、明確にすることもできる。あだ名をつけることは、こども時代に、そして学校において、広く普及している。男性は女性より、あだ名をつけられたり使ったりすることが多い。男性のあだ名は、強さや大きいことという意味を含むことが多い。たとえば、野球の松井秀喜選手をゴジラを呼ぶといったものである。女性のあだ名は、軽蔑的あだ名であるよりは、愛情のこもったものであることが多く、身体的・個人的特徴 (美しさ、親切)を示す傾向がある。学校の教師にあだ名を付ける慣行は広く普及している。教師は、教員としてのステレオタイプなイメージを自ら投影する。この教室でのペルソナは、子どもたちから教師を守り、また教師のプライベートな生活を守る防御手段となる。一般には親しさや、あるいは不満や軽蔑を表明するために使われる名付けの工夫を生徒がこっそりと使うことは、おそらくは強力な人物の地位を対処できる程度にまで矮小化する方法である。こういう形で、生徒であることからくる無力感が和らげられるのである。ここで使用するデータは、2008年から2010年における東京西部のある中学校の2.3年生のものである。