- 著者
-
西村 太志
浦 光博
- 出版者
- 広島国際大学心理科学部
- 雑誌
- 広島国際大学心理科学部紀要 = The bulletin of Faculty of Psychological Science, Hiroshima International University (ISSN:21883734)
- 巻号頁・発行日
- vol.1, pp.37-49, 2013
本研究は,自己評価動機の顕現化と参照他者の選択の様相が,自尊心の程度によって異なることについて,マインドセット理論を援用した検討を行った。熟慮、マインドセット状態において,低自尊心者は自己関連情報の収集を志向する,すなわち自己査定的な動機が高まるが,実際の情報収集の時点では自己防衛バイアスの影響を受けた選択が行われると予測した。将来の目標を想定させる場面を設定し,102名の大学生・短大生を対象に思考時間を操作する調査実験形式で実施した。その結果,低自尊心者は相対的に長時間思考した際には,自己査定動機の顕現化の程度を持続し続けるが,選択する他者の属性は客観性に乏しい人物であることが明らかとなった。さらに,自己査定動機のみならず自己高揚動機の自己防衛的側面も顕現化していることが示された。低自尊心者が長時間の思考をした場合,正確性への志向性を持つと同時に情報の獲得は自己防衛の影響を受けていた。低自尊心者の自己関連情報に関する判断の質や,状況の特質に応じた自己関連情報の獲得の可能性について議論された。