- 著者
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安藤 丈将
- 出版者
- 武蔵社会学会
- 雑誌
- 武蔵社会学論集 : ソシオロジスト : Journal of the Musashi Sociological Society (ISSN:13446827)
- 巻号頁・発行日
- vol.2014, no.16, pp.1-38, 2014-03-22
1991年9月, 青森県上北郡六ヶ所村で,核燃料サイクル工場へのウラン搬入を阻止するために,女性たちがキャンプを張った。本稿は,この「六ヶ所村女たちのキャンプ」について考察する。参加者の多くは,六ヶ所村から離れて暮らしていたが,自分が直接被害を受けるわけではないにもかかわらず,なぜ抗議行動に加わり,何を問題にしようとしたのか。その問題意識を探るとともに,最近の民主主義論の成果を用いながら,女たちのキャンプの実践を読み解いていく。感情や個別性のような女性に固有とされる徳性の否定的な理解を読みかえ,脱原発の思想を練り上げること。友情という非公式の政治的資源を利用しながら,より深い政治的コミュニケーションをつくり出すこと。非暴力直接行動の中に,他者への依存の許容と気づかいを組み込むこと。以上の点について論じながら,本稿では,女たちのキャンプではいかなる民主主義が実践されたのかを明らかにする。