著者
高井 正成 松野 昌展
出版者
京都大学ヒマラヤ研究会
雑誌
ヒマラヤ学誌 : Himalayan Study Monographs (ISSN:09148620)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.47-65, 1996-05-15

モンゴル共和国の首都ウランバートルにおいて, 現代モンゴル人を対象に, 歯科人類学的調査をおこなった. 男性19人, 女性30人の計49人の歯列印象をアルジン酸印象材を用いて採得し, その場で硬石膏を流し込んで作製したものを現代日本人およびパキスタン最北部のワヒー・タジク人から採得した歯列印象と比較検討した. またアフガニスタンのタジク人およびパシュトン人についての同様の調査の報告(酒井ほか, 1969; 1970) と比較して, 計測項目・非計測項目の両面から彼らの人種的な考察をおこなった. 現在までの歯科人類学的研究によると, アジア地域のモンゴロイドは東南アジア・インドネシア・ポリネシアに分布する「スンダドント型」集団と, 中国・日本・シベリアなどに分布する「シノドント型」集団に大別されることが多い. 現代モンゴル人を対象とした本調査の結果を現代日本人のものと比較したところ, 「シノドント型」の形質が日本人において, より典型的に出現していることがわかった. 日本人を含めた東アジアのモンゴロイド系住民の移動と進化を考える上で, 興味深い結果を示している.

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