著者
渡邉 憲正
出版者
関東学院大学経済経営研究所
雑誌
関東学院大学経済経営研究所年報 (ISSN:13410407)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.86-114, 2014-03

一般に,初期の自由民権論は,民権(天賦人権)を張り人民主権に基づく立憲政体を構想し,国家独立を求める国権論--小国主義--として,主に政治的脈絡で了解される。だが,およそ明治十四年の政変を境に--つまり自由民権運動の昂揚期(1881-84)に--,それは天皇主権論と国権拡張論に接近するという「転換」を遂げ,国力増進の経済的社会的文明化の傾向をますます強く顕現させるに至った。本稿は,この「転換」を植木枝盛の思想に即して論じ,自由民権論の思想構造を考察するものである。そして結論的には,「転換」の根拠を,1)啓蒙主義とスペンサー社会進化論を前提する天賦人権説の限界,2)対外関係論において近代思想が本来抱えるダブル・スタンダードの最終的受容,3)天皇制の受容という国権の自立化による人民主権論の喪失,4)「文明と野蛮」図式の拡張・変質,の4点に求め,ここに自由民権論の思想構造が現れることを指摘した。

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