- 著者
-
岡嶋 裕史
- 出版者
- 関東学院大学経済経営研究所
- 雑誌
- 関東学院大学経済経営研究所年報 (ISSN:13410407)
- 巻号頁・発行日
- vol.36, pp.131-139, 2014-03
ゲーム業界におけるパッケージゲームからソーシャルゲームへの移行が進行し,ヒットタイトルの多くをソーシャルゲームが占める状況が出来している。このトレンドはPS4などのコンシューマ機の設計とエコシステムの構造にまで影響を及ぼしており,今後も同一傾向が続くことが予想される。一般的に,ソーシャルゲームへの移行は,ユーザがゲームを楽しむ際の短時間志向や無償志向,基本的なインフラとなったSNSとの親和性をひいて説明されるが,本当にソーシャルゲームは短時間かつ無償で楽しめるものなのだろうか。完全に無償であれば,ベンダは開発意欲や開発リソースを維持することはできず,短時間プレイに限局されるなら,広告費でそれをまかなうことすら困難になる。背反するベンダとユーザの要求は,何らかの要素によって調整や隠蔽がなされているはずである。本稿では課金によって短縮される時間の性質に着目し,この背理した状況への説明を試みた。