著者
今野 洋子
出版者
北翔大学
雑誌
人間福祉研究 = Human welfare studies (ISSN:13440039)
巻号頁・発行日
no.6, pp.101-116, 2003-03-20

本報告は,大学生の避妊に対する意識・行動の実態を明らかにするとともに,現代の若者の性に関する諸問題等に対応できる避妊教育の方向性を考察するものである。札幌市近郊のA大学の学生を対象として,質問紙による集団調査を行った結果,以下のことが明らかになった。(1)避妊に関する意識が高く,相手の身体を思いやり,人間関係を大切にしながら,避妊行動を選択する意識がみられる。しかし,その一方で,相手任せの面もあり,場当たり的な避妊行動をとる面もみられる。(2)避妊に関する正しい知識を持っている者が多いが,男女差があり,男子のからだのしくみに対する理解が浅いために避妊に関する誤った知識を持っている。(3)「交際相手がいる」者は,全体で4割程度であるが,「性交経験がある」者は,全体の6割を占める。また,性交した相手の数は「1人」あるいは「2人」と回答した者が多いが,「6人以上」という者が1割以上で,性行動は活発化傾向にある。(4)実際に用いている避妊法は,「男性用コンドーム」「膣外射精」が多い。活発化する性行動に比べ,避妊法は画一的であり,また不確実な面がうかがえる。今後用いたい避妊法は,「男性用コンドーム」「経口避妊薬」を希望する者が多く,「入手しやすい」「費用が安い」「使用が簡単」「確実性が高い」避妊法が求められていることがわかった。確実な避妊行動の選択を可能にするためには,「避妊の意義や相手に与える影響」を考えさせること,女子ばかりでなく男子についても「からだのしくみ(生理的知識・科学的知識)」を十分理解させること,「若者に適した確実な避妊法」を普及させることが必要であろう。性教育が,現在の学生の性行動・性意識を規定するのみにとどまらず,次代を担う子どもたちを創る原動力であることを踏まえ,豊かな性と生の教育を構築していきたいと考える。

言及状況

Twitter (1 users, 1 posts, 0 favorites)

収集済み URL リスト