- 著者
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小菅 成一
コスガ セイイチ
Seiichi Kosuga
- 雑誌
- 嘉悦大学研究論集
- 巻号頁・発行日
- vol.50, no.1, pp.1-19, 2007-04-30
商法では、客の来集を目的とする人的・物的設備を備えて、公衆の需要に応ずる取引を行う場屋営業者(ホテル、映画館等を営業する商人).は、客の携帯品について、(1)客から寄託を受けたにもかかわらず、場屋営業者が当該携帯品を滅失または毀損した場合には、それが不可抗力により生じたことを証明しない限り、損害賠償責任を免れることができないと規定(商法594条1項)し、さらに、(2)客が寄託をしない物品であっても、場屋中に携帯した物品が、場屋営業者またはその使用人の不注意により滅失または毀損した場合には、場屋営業者は損害賠償責任を負うと規定(同条2項)している。この場屋営業者の責任めぐる裁判例は、これまであまり多く見られなかったが、ここ最近では、ゴルフ場のクラブハウス内における貴重品ロッカーからの窃盗犯による財物の盗難とキャッシュカードの不正使用に関する事件が多発したことから、被害に遭った客が、ゴルフ場に対して場屋営業者としての責任を追及する訴訟が増えてきているという。そして、こうした裁判例の中には、まず貴重品ロッカーに携帯品を保管したことにつき、客と場屋営業者との間に寄託契約が成立するのか否かを検討し、その結果、寄託契約が成立しなくても、場屋営業者側に、貴重品ロッカー等の施設内の管理に不注意があった場合には、当該営業者に対し、商法594条2項に基づく善管注意義務違反を認めるものも出現してきている。本稿では、場屋営業者の責任に関する商法594条の規定の趣旨を確認した上で、当該規定に関する近時の裁判例を検討しつつ、場屋営業者には、例え客との間に寄託契約が成立しなくても、客が安心して携帯品を貴重品ロッカー等に預けられるようにするための施設に対する安全管理義務があると結論付けている。