- 著者
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大成 清
- 出版者
- 養賢堂
- 雑誌
- 畜産の研究 (ISSN:00093874)
- 巻号頁・発行日
- vol.67, no.5, pp.547-552, 2013-05
アメリカのDDGS産業の経過をみると,最初に行われたのは湿式法によるエタノール製造である。自動車のガソリンに一部混入するようになってから乾式法による製造が拡大した。この製造法から副次的に排出されるDDGSは,ゴールデンDDGSとして,旧式法とは一線を画すようになった。これでかなり製品の品質は安定するとともに,一段と向上したわけだが,依然として品質は不安定であった。このため,更なる品質の向上を目指して採られた手段は,DDGSのSつまりソリュブルをDDGSから除去するということである。DDGに液状かつ低品質のソリュブルを吸着さすと,その後乾燥に更なる加熱を要し,リジンの品質低下や,全般的な消化率の低下を招くというのである。この結果,DDGSではなく,DDGが一部上市されるようになってきた。これで一応の終結をみたかに思えたが,実はそうではなかった。今度はアミノ酸バランスの一層の改善と,含有カロリーの向上を目指して,エタノールの発酵工程に入る前に,原料トウモロコシの脱外皮,脱胚芽を行い,CP41%という高蛋白質DDGを生産するわけである。以上のようにアメリカのDDGならびにDDGS産業は,品質の向上を求めてどこまでも発展してきた。アメリカを始め,いろいろな国ではバイオエタノールの生産に鎬を削っているが,これとは別に,今アメリカではシェール・オイル(chale oil)の生産が話題になっている。油母頁岩(オイル・シェール)というのがある。アメリカの内陸各地で石油を含んだ岩石が探査され,すでに採油も始まっているという。これが実用化すれば燃料革命が起るわけで,食糧用穀類からエタノールを製造するという,迂遠な道を辿らなくても済むことになる。オイル・シェールは油母(ゆも)頁岩,瀝青ケツ岩とも呼ばれ,北アメリカ,オーストラリア,スコットランドや,中国東北部(旧満州国)に古くから産出していた。中国東北部にあったのは,満鉄撫順炭鉱で,満鉄にはかつて筆者も勤務していたことがあり,郷愁の地である。撫順炭鉱(東西47km,南北4km,埋蔵量10億トン,従業員3万2千人)は,有名な露天掘りの炭鉱で,石炭層の上層に頁岩が厚く覆われていた。しかし頁岩中の油分は微量で,レトルト中で乾留した場合の収油率は,平均約5.5%といわれ,当時の技術レベルでは実用化は無理とされていた。アメリカでは地中深くから,オイルだけを採取する新技術を開発(ノースダコタ州,バッケン油田)したようで,一挙に注目を浴びている昨今である。