著者
湯浅 邦弘
出版者
島根大学教育学部
雑誌
島根大学教育学部紀要(人文・社会科学) (ISSN:02872501)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.1-24, 1993-12-25

聖王黄帝と車神蚩尤とは、中国の戦争起源神話に登場する二大神格である。史上初めて武器を作り黄帝に戦いを挑んだ蚩尤は、大暴風雨を興して黄帝を苦戦に陥れるが、應龍・玄女の助力を得た黄帝によって、最後はタク鹿の野に誅殺された。一方、黄帝は、この勝利によって世界の統一を果たし、以後、中国文明の始祖として聖王伝説の上に君臨することとなった。13; この黄帝・蚩尤神話について、筆者は先に、蚩尤が武器や戦争を創始したという蚩尤作兵説、蚩尤が黄帝に匹敵する身分・力量を備えていたという種々の伝説について、多くの関係資料を分類しつつ考察を加えた。13; その結果、『呂氏春秋』蕩兵篇、『大戴礼記』用兵篇のみは、そうした通説の中で極めて特異な蚩尤像を提示していることが明らかとなった。13; 『呂氏春秋』蕩兵篇は、多くの資料が大前提とする蚩尤作兵説を明確に否定する。また『大戴礼記』用兵篇も、蚩尤作兵説を否定し、更に、蚩尤の地位についても、通説に反して蚩尤庶人説を主張していた。13; そこで、引き続き本稿では、『呂氏春秋』『大戴礼記』がこうした特異な蚩尤像を提示する理由について考察を進めて行くこととする。

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