- 著者
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吉野 浩司
吉野 浩司
- 出版者
- 長崎県立大学 東アジア研究所
- 雑誌
- 東アジア評論 (ISSN:18836712)
- 巻号頁・発行日
- vol.3, pp.201-214, 2011-03
ヨーロッパによって名づけられたアジアではなく、世界に貢献しうる地域共同体としてのアジアをつくること、それが竹内好の「方法としてのアジア」の問題意識であった。本稿では、これを西洋と東洋のアジア観の変遷を読み直すための方法として用いると、どのようなことが言えるのかを考えてみた。対象として取り上げたのは、ヘロドトスからアウグスティヌス、さらには大航海時代の宣教師、津田左右吉や宮崎市定といった、古代から現代までの様々な著述家たちのアジア論である。これらを検討することにより明らかになったことは、アジアという枠組みは、その発祥からして、受け身の性格づけを余儀なくされてきたという側面である。すなわちアジアはヨーロッパ以外の地域として位置づけられてきたのである。しかし、その事実を受け止めた上で、より積極的にアジアというものを確立しようとするのが、竹内の方法を継承しようとする本稿の試みにほかならない。