著者
ポンサピタックサンティ ピヤ ポンサピタックサンティ ピヤ
出版者
長崎県立大学 東アジア研究所
雑誌
東アジア評論 (ISSN:18836712)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.65-74, 2016-03

本研究の目的は、現代タイ社会における若者の精霊信仰にメディアが及ぼす影響を明らかにすることである。筆者は、2015年夏に、タイの若者の精霊信仰に対する考えかたを調査するために、タイ・バンコクの大学生を対象にアンケート調査をおこなった。本論文は、その調査の中で特に、マスメディアと精霊信仰の役割についての質問項目をとりあげ分析考察をめざすものである。調査の結果、タイの若者の多くは、テレビドラマやテレビ番組、映画から精霊に関するイメージや情報を得ていることが明らかになった。また、若者がイメージする男性精霊は特定のものに集中しているが、イメージされる女性精霊は多様であることがわかる。さらに、現代タイ社会において女性の精霊は怖いイメージとして捉えられているが、男性の精霊は優しいイメージとして捉えられている。このような研究結果により、タイの若者は、テレビや映画などのメディアに表象される精霊イメージの影響を受けていると考えられる。
著者
吉光 正絵 吉光 正絵
出版者
長崎県立大学 東アジア研究所
雑誌
東アジア評論 (ISSN:18836712)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.63-76, 2015-03

K-POPブームについては、韓国政府主導の韓流振興政策や韓国の大手音楽事務所の海外市場戦略の成果として語られてきた。一方で、ポピュラー文化研究やファン研究、オーディエンス研究の文脈では、世界各国に点在するファン達が、インターネット上で巨大なファンコミュニティを構築し、彼らの能動的な活動の影響力が指摘されてきた。現在では、このようなファンの力を、送り手である音楽産業やマスメディアも利用し、送り手と受け手の相互作用によって大規模なブームが生み出だされている。K-POPブームは、YouTube上にあげられたコピーダンスについてTwitterで言及することで世界中に拡散された側面がある。このような状況からK-POPの世界的なブームは、米国発のグローバルなICT技術が媒介となって、コンヴァージェンス(収斂)が上手く達成された結果だと考えられる。一方で、韓国は、ICT技術を利用したユニークな技術や文化を生み出してきた。これらの中でもK-POPファンが利用するメディアに「見えるラジオ」がある。本論文では、先行研究の論点を整理検討した上で、K-POPブーム期の海外ファン達の韓国特有のインターネットを利用したメディアの利用状況とメディアの運営者の海外ファンへの対応に焦点をあてて論考した。具体的には、「見えるラジオ」のプロデューサーらに実施したインタビュー調査の結果をもとに考察した。
著者
吉野 浩司 吉野 浩司
出版者
長崎県立大学 東アジア研究所
雑誌
東アジア評論 (ISSN:18836712)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.201-214, 2011-03

ヨーロッパによって名づけられたアジアではなく、世界に貢献しうる地域共同体としてのアジアをつくること、それが竹内好の「方法としてのアジア」の問題意識であった。本稿では、これを西洋と東洋のアジア観の変遷を読み直すための方法として用いると、どのようなことが言えるのかを考えてみた。対象として取り上げたのは、ヘロドトスからアウグスティヌス、さらには大航海時代の宣教師、津田左右吉や宮崎市定といった、古代から現代までの様々な著述家たちのアジア論である。これらを検討することにより明らかになったことは、アジアという枠組みは、その発祥からして、受け身の性格づけを余儀なくされてきたという側面である。すなわちアジアはヨーロッパ以外の地域として位置づけられてきたのである。しかし、その事実を受け止めた上で、より積極的にアジアというものを確立しようとするのが、竹内の方法を継承しようとする本稿の試みにほかならない。
著者
ポンサピタックサンティ ピヤ ポンサピタックサンティ ピヤ
出版者
長崎県立大学 東アジア研究所
雑誌
東アジア評論 (ISSN:18836712)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.31-45, 2013-03

本研究の目的は、日本およびタイの保険のテレビ広告の特徴を明らかにすることである。具体的には、保険のテレビ広告にみられる主人公の年齢層、そして、ジェンダー役割をそれぞれ比較することで、現代における日本とタイの社会・文化的状況を分析する。日本とタイの保険のテレビ広告における主人公の年齢層およびジェンダー役割について比較分析をおこなった。その結果、両国の保険のテレビ広告のなかには、消費者のジェンダー意識や家族観、文化・社会状況が鮮明に反映されており、とくに男女平等のイメージが生成されているということが明らかになった。