- 著者
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小野 展克
- 出版者
- 嘉悦大学研究支援・論集編集委員会
- 雑誌
- 嘉悦大学研究論集 = Kaetsu University research review
- 巻号頁・発行日
- vol.57, no.1, pp.1-17, 2014-10
本研究では、昭和金融恐慌を当時の新聞が、どのようなキーワード、キーセンテンスを使用して報じたのかを分析した。具体的には、片岡直温蔵相の失言に端を発した東京渡辺銀行の取り付け騒ぎを東京朝日新聞、読売新聞、中外商業新報がどのようなキーワードを使って記事化したのかを分析した。昭和金融恐慌は、この東京渡辺銀行の取り付け騒ぎ、鈴木商店の経営不振による台湾銀行の信用不安、台湾銀行の休業という3つの波があり、片岡直温蔵相の失言は、その幕開けとなった事件として注目される。また、先行研究として金解禁をめぐる新聞論調の変化を追った中村宗悦や経済報道のゆらぎ現象の増幅効果を指摘した駒橋恵子らの考察を踏まえ、報道が昭和初期の政策決定に与えた影響も考察した。