- 著者
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奥野 圭子
Okuno Keiko
- 出版者
- 神奈川大学経営学部
- 雑誌
- 神奈川大学国際経営論集 = Kanagawa University international management review (ISSN:09157611)
- 巻号頁・発行日
- no.48, pp.157-170, 2014-10
現在、いわゆる世界的な大競争時代であり、世界中の企業が生き残りをかけて基盤、財政力、技術等の国際競争力を拡大しようとしている。これは、わが国の企業も同様であり、市場の低成長下における生き残りをかけた企業戦略の手段としてM&A(Mergers and Acquisitions)も活発化している。 しかし、この活発化にともないインサイダー取引や相場操縦、虚偽記載等のような違反行為も増加した。悪質な場合には、既存の刑事罰で処することができるが、これを科すほどに至らない違反行為が問題となっている。これは、証券市場の公正性と投資者の信頼を著しく害する行為であるにもかかわらず、処分を受けない違反行為者が後をたたないためである。 そこで、国家はこれらの行為を抑止するために、金融商品取引法(以下、金商法)上に行政措置として金銭的な負担を課す課徴金制度を設置し、金融市場、資本市場等の公正性および透明性を確保することとした。これに対し、日本経済団体連合(以下、経団連)等では、課徴金はもともと独占禁止法上で不当利息の剥奪と位置づけられていたため、違反行為抑止を名目に改正毎に厳しくなる当該制度に「かえって萎縮を招く」との批判の声が高まっている。 本件は、金商法の課徴金制度について示された初の司法判断である。このため、本件に関する一連の司法判断を追うことによって、金商法上の課徴金制度の立法目的、目的遂行のための手段等が明確となるであろう。その上で、金商法上の課徴金納付命令の違憲性についての考察を試みる。判例評釈