著者
郷原 佳以
出版者
関東学院大学[文学部]人文学会
雑誌
関東学院大学文学部紀要 (ISSN:02861216)
巻号頁・発行日
no.131, pp.121-141, 2014

モーリス・ブランショ(1907-2003)はフロイトの精神分析とどのような関わりをもったのだろうか。まず気づかれるのは、ブランショが同時代の作家や批評家たちと異なり、精神分析を文学に導入することに対してきわめて慎重であり、文学作品の精神分析的解釈を繰り返し批判したことである。文学言語は作者の精神分析には還元しえない「終わりなきもの」への接近であるというのがブランショの見解であった。他方でブランショは、精神分析理論における「反復強迫」や「死の欲動」に関しては、同じ理由から、文学の経験との親近性を見出していた。注目すべきは、ブランショが1956年の論考「フロイト」において、多くの留保は示しながらも、精神分析における「対話」に「終わりなきもの」との関わりを認めたことである。ブランショにとって、精神分析は治癒のための制度である限りでは文学とは相容れないが、その「対話」においては文学の経験と接近するのである。

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