著者
高 文勝
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.85-102, 2009-11

本稿では、満州事変までの国民政府の満蒙問題に対する態度を考察することで、主に以下のことを示すことができた。第一に、日露戦争後、満蒙における特殊権益を拡大しそれを維持していくのは日本の一貫した政策であり、日本はその特殊権益を中国側に返還する意図を有さなかったのである。この問題について、幣原外交も例外ではなかった。第二に、満州事変までの国民政府の満蒙問題に対する態度は大体において孫文の主張を継承するものであり、日本に対してかなり妥協的であった。国民政府はその革命理念から日本の満蒙特殊権益を回収すべきだと主張するが、満蒙特殊権益の早急の回収が不可能だと認識し、それを現実として容認し、その根本的解決を将来の懸案として後回しにして、当面解決可能な問題から日中関係の改善を優先し、両国間の感情を緩和していく、その上で、満蒙問題の解決を図ろうとした。このようなアプローチは幣原外交における対中国政策と一致している。したがって、満蒙問題に関して、日中両国は究極の目標において対立したものの、交渉による妥協の余地が十分にありうるであろう。

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