著者
千葉 慶
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.85-118, 2009-03

戦後日本映画は、日米安保体制下の日米関係をどのように物語化したか。本稿では、石原裕次郎を対象に上記の問題を考察する。石原裕次郎の主演映画では、「自己の擁護と回復」というテーマが執拗に反復された。このテーマは、安保体制に基づく日本の植民地的状況を舞台にした、「植民地的主体」としての日本と「帝国主体」としてのアメリカとの葛藤を描いたナショナル・アレゴリーに起源があった。一九六〇年代までの裕次郎映画には、この「植民地的主体」意識をいかに認識し、いかに克服するかをめぐる物語的系譜が存在していた。安保改定交渉による日米関係の同等化への政治的試みは、六〇年安保直前の裕次郎映画に、「帝国」アメリカに勝利する「植民地」日本のヒーローを生み出した。しかし、安保闘争の挫折以後の裕次郎映画は、日本はアメリカには決して敵わないという去勢神話を生み出し、徐々に「植民地的主体」を論じなくなってゆく。

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こんな論文どうですか? 日米安保体制と裕次郎映画--戦後日本映画における「植民地的主体」意識の臨界点をめぐって(千葉 慶),2009 https://t.co/NrbXAREiJD 戦後日本映画は、日米安保体制下の日米関係をどのように物語化したか。…
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