- 著者
-
前原 正美
- 出版者
- 中央大学経済研究所
- 雑誌
- 中央大学経済研究所年報 (ISSN:02859718)
- 巻号頁・発行日
- no.46, pp.51-86, 2015
本稿の目的は,総じていえば,石田三成の御旗「大一大万大吉」(だいいちだいまんだいきち)に見る政治思想を,『老子道徳経』ならびに聖徳太子の政治思想との関連で考察すること,また石田三成の経済観を明らかにすることにある。 本稿においては,従来の研究ではまったく考察されてこなかった石田三成の旗印「大一大万大吉」に焦点をあてて,石田三成の政治思想と経済観を考察した。本稿の独創的研究は,① 石田三成の旗印「大一大万大吉」の政治思想の原点を老子の政治思想に見いだしたこと,② 石田三成の政治思想は,老子の思想,聖徳太子の《「和」の政治思想》を受け継いで,《「愛」の政治思想》にまで昇華させた内容であること,③ 石田三成の旗印の意味内容には「大一」「大万」「大吉」にそれぞれ対応させて,石田三成の政治思想(「大一」),政治体制(「大万」),人間の幸福=生命いのちの尊さ(「大吉」)という意味内容が示されていること,④ また「公」儀=豊臣「政権」の政治思想は,公武合体思想であること,⑤ そして「公」儀=豊臣「政権」の二重性のゆえに,豊臣秀吉と石田三成との政治経済思想の見解の相違がしだいに浮き彫りになってゆくこと,⑥ 石田三成は,明国,朝鮮国との和平交渉によって貿易利益の増大や商工業の発展に伴う社会的生産力の向上→経済力の向上を通じて,豊臣「政権」の強化を企図したが,こうした考え方のなかに,石田三成の経済観を見てとることができること,などを明らかにした点にある。