- 著者
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緒方 由紀
- 出版者
- 佛教大学福祉教育開発センター
- 雑誌
- 福祉教育開発センター紀要 (ISSN:13496646)
- 巻号頁・発行日
- no.13, pp.85-102, 2016-03
本稿は、人権の時代と言われている現代において、精神障害者本人の意思決定をめぐって法制度、介入、関係性の側面から論点整理を行い、問題をあらためて提示することを目的としている。まず日本の精神障害者のケアの特徴は、治療の主体よりも先に歴史的に監護義務者、保護義務者として医療手続きの責任者に家族等を位置付けたことにあり、彼らがその後の社会資源となりうるかどうかの判断の基準をつくってしまったことにある。また医療として入院を先行させたことにより、次の目標を退院の可否という点に援助の幅を矮小化せざるを得なかったこと。入院手続きに関する法律上の幾度かの変更は、患者としての人権を守る意味では前進したものの、本人の治療への参加については今なお限界があることを示した。 さらに当事者の危機に際し本人の登場をどのように確保するのか、対話を用いた場面構成が本人の意思決定においても意味をもつことを最近の支援モデルにふれながら確認し、最後に強制的介入を発動する側の倫理上の厳格な検討があらためて必要であることを検証した。意思決定支援モデル精神障害者強制治療