著者
緒方 由紀
出版者
佛教大学福祉教育開発センター
雑誌
福祉教育開発センター紀要 (ISSN:13496646)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.33-57, 2017-03-31

現代社会論を構成する包摂や共生社会といった概念は、多元的な政策への構築を基盤としながら、一方に市民社会の成立と構成員である自立的市民像としての新しい権利や義務の確立を求めるものになっている。そのことは精神保健医療福祉における新たな政策・実践面でも共通の課題であり、その一つが当事者の位置づけをめぐる議論である。つまり発病からさまざまな医療・福祉・生活等のサービスの利用、さらに市民生活の獲得にいたるまで、精神障害者の意思を精神保健医療福祉システムにどのように位置づけるかということに深く関わっている。そうした時代認識のもと本稿では、精神障害当事者の意思決定および意思の表明について、障害者権利条約や国のモデル事業として検討されてきたアドボケーター機能や意思決定支援ガイドライン構想等をとりあげ、現状の意思決定にかかる支援の方向性の整理を行った。精神障害者は法律上、医療的保護を必要とする存在としてとらえられてきたものの、一方で「社会復帰の促進及びその自立と社会経済活動への参加の促進」という理念も同時に掲げられていることからすると、広く障害者の権利と結びつく形で支援が示されなければならないことになる。精神障害者に対する非自発的入院・治療や行動制限等といった強制介入が、精神医療の手続き面での本人の不在を認めうるのは、本人の尊厳を尊重しつつも専門的介入の適正性の担保がとれているかという社会的了解事項の側面ももちあわせている。言い換えれば本人の意思表明や意思決定に関して、権利擁護の視点からだけではなく、社会的責務として危機管理や安全・安心を組織や地域の中では考えなければならないという現実の中で、時に意に反した介入の判断がなされることを再確認した。最後に、意思決定をめぐるさまざまな議論の行方が、支援者側のあるべき姿にとどまるのではなく、法的能力(legal capacity)とその行使のための意思表明のありかたの契機として進めていく必要性を論じた。意思表明意思決定支援精神障害者法的能力の享有専門的介入
著者
篠原 由利子
出版者
佛教大学
雑誌
福祉教育開発センター紀要 (ISSN:13496646)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.37-52, 2015-03-31

精神保健医療福祉領域にあって、当事者の心理・社会的支援を深めていく視点として不可欠なものが生活者の視点であり、障害特性(生活のしづらさ)であることは言うまでもない。疾患や障害が医学的記述やチェックシートによって計測され、計量化される時代にあって、福祉支援は「生きづらさ」「付き合いづらさ」等々、生活面、人生面に及ぼす影響がどのようなものかという当事者理解はことさらに必要である。しかし体験を理解するのはなかなか難しいものである。当事者の体験記や教育教材も出版されつつあるが、この稿では映像(映画)による共感的理解の深まりの可能性を論じた。
著者
伊部 恭子
出版者
佛教大学福祉教育開発センター
雑誌
福祉教育開発センター紀要 (ISSN:13496646)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.35-56, 2018-03-31

本研究の目的は、社会的養護を経験した人々への生活史インタビューの結果から、どのような支援が求められているかを明らかにすることである。本稿では特に、施設退所後の生活のなかで様々な困難に直面しながらも、本人がふりかえってみたときに、「どのようなところから力をもらってきたのか」、「どのようなことが支えになっているのか」に焦点をあて、考察した。方法としては、初回インタビュー(調査協力者 31 人)から 6~10 年を経た追調査において、現在までに聴き取りを終えている 15 人の語りの内容を中心に取り上げる。検討の結果、次のことが示唆された。一つ目は、施設入所中に力をもらったり、支えとなった経験の記憶が、現在の生・生活の営みを支える源になっていること、二つ目は、退所後の生活における不安や困難に直面した時に本人が力をもらったり、支えられたりした経験が、その後の本人の生・生活においても大切なものとして位置づいていること、三つめは、本人自身が何か(誰か)のために役立ちたい、支えたいという意思をもち、その経験からも支えられたり、力を得ていることである。また、これらに通底するのは、本人にとってかけがえのない"個人"・"人(ひと)"との関わりがあり、その関係性のなかで本人自身が受けとめられ、本人の生やニーズが肯定されていることを実感しているということが導かれた。本稿で得た結果は、15 人の語りから例示された一部であり、その内容も個別的であるため、一般化・普遍化に向けての限界がある。今後は、生活史インタビューにおける本人の語りの全体像を見渡し、質的調査におけるナラティヴの分析方法を用いた検討が課題となる。その際、語り手の主観的な生活世界の観点から、傷ついた経験やつらかった経験に関する語り(生の営みの困難に関する語り)を含め、本人にとって、どのようなときに、どのような人との関係において、どのようなことが助けとなり生きる力をもらったのか(生の営みの肯定・回復に関する語り)に着目する。そのうえで、社会的養護のもとで育つ子ども・若者への支援について、ソーシャルワークの支援過程と援助関係の理論的検討をふまえて考察することを課題としたい。社会的養護児童養護施設生活史支えられた経験援助関係
著者
岡村 正幸
出版者
佛教大学福祉教育開発センター
雑誌
福祉教育開発センター紀要 (ISSN:13496646)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.13-31, 2017-03-31

本稿では主として大学における社会福祉教育とそのもとでの社会福祉専門職教育とともにその中核をなすソーシャルワーク教育の相互関係を福祉臨床論の視点から取り上げる。とくにわが国の大学教育としての社会福祉教育の歴史的な蓄積は、1987 年及び1997 年の両国家資格制度の導入以後、職業教育としての社会福祉専門職教育が「読み替え」を通し、大学教育の中核に導入されることによって大きな変容を見せている。そこでは国家試験出題基準を強く意識した指定テキスト教育の強化によりあたかもテキスト科目の知識の取得がカリキュラムを通してソーシャルワーカーになるかも知れない学生の唯一の目標になりかねない危惧を見せている。そこには歴史的に形成発展してきた社会福祉の社会的機能やそれらの基礎となる社会福祉の哲学、思想や社会や人への理解を深める学問の軽視がある。ここではそうした現実を踏まえ、特にわが国での「不幸な出会いともいえる社会福祉教育とソーシャルワーカー教育」1)のもと、いかに大学での社会福祉教育の一環としてのソーシャルワーク教育を進めていくのか、ソーシャルワークプロセス構造を取り上げ検証する。その際、「物語の中のソーシャルワーク」という視点、方法をとる。物語(ナラティブ)ソーシャルワークプロセス福祉臨床論福祉援助専門職教育
著者
松本 聡子
出版者
佛教大学福祉教育開発センター
雑誌
福祉教育開発センター紀要 (ISSN:13496646)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.107-122, 2017-03-31

本稿では、ハンセン病の患者であった人の家族による語りから動き出した家族訴訟を中心に、ハンセン病問題の残された課題について取り上げる。特に、ハンセン病についての差別・偏見は、ハンセン病療養所にいるハンセン病回復者と離れて暮らす家族にも直接向けられていた。そのため執拗ないじめを受けたり、親と引き離され孤児となったり、就職や結婚で苛烈な差別・偏見・迫害にさらされ、地域ではその居場所を奪われ住み続けることもできなくなり、自ら命を絶つまでに追い込まれた家族も少なくない。今なお、ハンセン病の患者であった人が身内にいる事実を、戸籍の上でも実生活の上でも隠さなければならない人々は数知れず、この被害は続いている。ここで取り上げる家族訴訟は、ハンセン病の患者であった人の家族である原告一人ひとりの尊厳を取りもどす回復の過程であり、国の誤ったハンセン病強制隔離に加担・協力した各界のみならず、社会の側ないし私たち市民にも人間の尊厳を問う重い課題を含んでいる。そのため、家族訴訟に至った経緯を整理し原告となった家族の語りにふれながら、この問題がらい予防法廃止から 20年も経つ今日まで、なぜ解決に踏み出せなかったのか、ハンセン病強制隔離政策の歴史を踏まえ家族の支援がどうであったか、社会福祉の観点からもあらためて検証を試みるものである。強制隔離政策無らい県運動ハンセン病家族訴訟れんげ草の会
著者
杉原 努
出版者
佛教大学
雑誌
福祉教育開発センター紀要 (ISSN:13496646)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.53-70, 2015-03-31

日本は世界でも群を抜いて多数の精神科ベッドおよび長期入院者があり、その対応は精神保健福祉政策の喫緊の課題である。そこで、長期入院者への退院支援に関する先行研究の論点を明らかにするとともに、退院を困難にしている要因の検証を行った。さらに、先行研究が着目した研究視点をカテゴライズした。その結果、17 の概念、5 つのサブカテゴリー、2つのカテゴリーに分類できた。一つのカテゴリー(本文表1 の番号1 から9)では、日本の精神科医療政策の問題点が明らかになった。地域における社会資源整備の遅れにより長期入院を生じさせてしまった現状があった。もう一つのカテゴリー(本文表1 の番号10 から17)では、考え方や実践における退院支援の観点が明らかになった。退院支援方法の確立と地域における支援システムの形成がなされつつある現状があった。これらは、長期入院者の社会的復権に向けた取り組みの一つとして位置づけられよう。本稿では主に後者のカテゴリー内容について論じる。 なお、本稿は同タイトルの第1 稿1)に次ぐ第2 稿である。字数制限があった第1 稿に記載しきれなかった内容について述べる。また、研究目的、研究方法、結果は第1 稿と同様なのでその一部を転記する。
著者
山田 宗寛
出版者
佛教大学福祉教育開発センター
雑誌
福祉教育開発センター紀要 (ISSN:13496646)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.33-40, 2016-03-31

糸賀一雄と田村一二、池田太郎は、戦後間もない頃に戦災孤児や浮浪児たちを、福祉や教育によってその人格や発達を輝かせ、社会を築いていく主体となっていくことを願って近江学園を設立した。そこでは子どもや障害のある人の要求を出発点にした実践によって「この子らを世の光に」や発達保障など社会のあり方を提起し、施設や制度を立ち上げ、今日の福祉につながっている。 一方、戦後70 年となった現代にあっても、貧困や虐待、ひきこもりをはじめ福祉の課題は拡がっている。糸賀らは、福祉対象者への支援課題から、制度や施策を創造し、主体的に社会のあり方を提起した。今日の児童虐待と戦災孤児の問題を考究すると、糸賀らが見つめた社会と現代は、共通する人間の人格や発達の課題が見えてくる。 糸賀思想は、現代の社会においても、今日的に実践していくことが重要であり、すべての人がゆたかに生きる社会を実現していく社会指標といえる。糸賀一雄戦災孤児近江学園児童虐待発達保障
著者
緒方 由紀
出版者
佛教大学福祉教育開発センター
雑誌
福祉教育開発センター紀要 (ISSN:13496646)
巻号頁・発行日
no.13, pp.85-102, 2016-03

本稿は、人権の時代と言われている現代において、精神障害者本人の意思決定をめぐって法制度、介入、関係性の側面から論点整理を行い、問題をあらためて提示することを目的としている。まず日本の精神障害者のケアの特徴は、治療の主体よりも先に歴史的に監護義務者、保護義務者として医療手続きの責任者に家族等を位置付けたことにあり、彼らがその後の社会資源となりうるかどうかの判断の基準をつくってしまったことにある。また医療として入院を先行させたことにより、次の目標を退院の可否という点に援助の幅を矮小化せざるを得なかったこと。入院手続きに関する法律上の幾度かの変更は、患者としての人権を守る意味では前進したものの、本人の治療への参加については今なお限界があることを示した。 さらに当事者の危機に際し本人の登場をどのように確保するのか、対話を用いた場面構成が本人の意思決定においても意味をもつことを最近の支援モデルにふれながら確認し、最後に強制的介入を発動する側の倫理上の厳格な検討があらためて必要であることを検証した。意思決定支援モデル精神障害者強制治療
著者
塩満 卓
出版者
佛教大学福祉教育開発センター
雑誌
福祉教育開発センター紀要 (ISSN:13496646)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.73-89, 2017-03-31

本稿の目的は、精神障害者対策を図るうえで、家族がどのように位置づけられてきたのか。保護者制度の源泉も辿りつつ、今日までの歴史的経緯を明らかにし、精神障害者家族に対する制度上の課題を言及していくことである。研究の結果、江戸時代後期には、「精神病者監護法」の私宅監置や家族の個別責任化という処遇や思想の原形が明文化・制度化されていた。そして、明治後期以降の精神障害者家族は、治安対策上、無償で機能する法の執行者として、さらには疾病管理から日常生活支援に至るまでのケアラーとして位置づけられ続けた。2013年の精神保健福祉法改正で「保護者制度」は廃止されたものの、医療保護入院の契約者は「保護者」が「家族」に変更されたに過ぎず、実態はこれまでと変わっていない。今後の精神障害者対策は、家族介護を前提としない「脱家族」の制度設計を目指し、家族介護に代わる公共的支援を量的にも質的にも拡充していく必要があることを指摘した。保護(義務)者制度精神障害者家族残余的福祉モデル脱家族家族介護
著者
金田 喜弘
出版者
佛教大学福祉教育開発センター
雑誌
福祉教育開発センター紀要 (ISSN:13496646)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.85-97, 2018-03-31

社会福祉士及び介護福祉士法が施行され30年が経ち、社会福祉専門職のひとつである社会福祉士が多くの福祉現場で実践を展開している。国の政策動向においても、社会福祉士への期待は大きい一方で、養成校の減少や福祉離れが深刻化している。本研究では社会福祉学部の学生が社会福祉専門職を目指すキャリア選択と、社会福祉士実習やその他の福祉教育との関連性について明らかにすることを目的に、複線経路・等至性モデル(TEM)を用いて分析を試みた。分析の結果、「社会福祉実習に臨むことを決断(第1期)」、「社会福祉実習を通した学び(第2期)」、「ソーシャルワーカーとして働くことを選択(第3期)」の3つの時期区分で推移していることがわかった。社会福祉専門職を目指すための福祉教育の展開プロセスとして、(1)社会福祉実習の重要性、(2)地域福祉フィールドワークや福祉現場インターンシップなどの社会福祉実習以外の補完的な取り組み、(3)ソーシャルワークイメージの明確化の3点が重要であることが明らかとなった。TEM福祉教育社会福祉専門職
著者
岡村 正幸
出版者
佛教大学福祉教育開発センター
雑誌
福祉教育開発センター紀要 (ISSN:13496646)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.69-84, 2016-03-31

1970年代における急速なグローバル化と経済的危機の進展以後、財政的赤字を背景に「大きな政府」から「小さな政府」への移行が求められてきた。いわゆる後期近代における「福祉国家の近代化」にどう対応していくのか。社会福祉の社会的機能の見直しが求められている。ここでは2014年ソーシャルワークのグローバル定義の見直しの中、ヨーロッパを中心に語られるソーシャルワークの危機を手がかりに新しい多元的な福祉供給体の位置づけと、そのもとでの方法としてのソーシャルワークの機能と手続きについて検証をしてみたい。その際、福祉臨床という視点と立場をとることを通して「福祉臨床論」構築の足がかりとしたい。福祉臨床論福祉国家の近代化多元的福祉国家ソーシャルワーク
著者
村岡 潔
出版者
佛教大学福祉教育開発センター
雑誌
福祉教育開発センター紀要 (ISSN:13496646)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.57-69, 2018-03-31

本稿は、クライエントに対するケアテイカーのアプローチの仕方について、私秘的言語と公共的言語の側面から考察し、両者の出会いおいて、ケアテイカーが、患者や障害者であるクライエントを正常か異常かという先入観なしにアプローチするための方法論について考察した。第I節では、意思疎通における視覚障害や聴覚障害の機能についての解題を行ない、いわゆる健常者との異同の意味について言及した。第II節では、意思疎通に関して私秘的言語と公共的言語の対比を行ない、前者への配慮の必要性について述べた。第III節では、コミュニケーションにおける文化的レンズの機能について解説し、クライエントとの対応には異文化同士の出会いのような「異邦人的接遇」が不可欠だとした。第IV節ではクライエントの私秘的言語の特徴について事例をふまえて紹介した。第V節では、個々人の環境世界と心身像について分析し、クライエントの理解にはそれらへの配慮が必要であることを指摘した。最後に第VI節では《イルネス》と《ディジーズ》の二分法において《イルネス》に象徴される私秘的言語の中心にある「主観」の復権の重要性について指摘した。私秘的言語と公共的言語クライエントとケアテイカー異邦人的接遇環境世界とプライバシー空間イルネスとディジーズ
著者
北垣 智基
出版者
佛教大学
雑誌
福祉教育開発センター紀要 (ISSN:13496646)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.35-55, 2014-03-31

本稿の目的は、介護現場における人材育成・定着に向けた取り組みの実態と課題、ならびに関連する政策・制度上の課題について考察を行うことにある。本稿では調査データとして、平成24 年に京都府で実施された「福祉・介護事業所の経営実態と労働環境調査」の結果の一部を用いて考察を行い、以下の点を指摘している。第一に、多くの介護現場では人材育成・定着に向けた取り組みが意識的に行われており、一定の課題を含みつつも、その有効性が労働者に認識されている点である。第二に、介護現場では取り組みを進めるなかで直面している問題があり、そこに介護報酬の水準や人員配置基準といった政策・制度上の問題が関連している、という点である。今後も介護人材対策が必要視されるなかで、現場における取り組みの継続・発展と合わせて、本稿で指摘する政策・制度上の問題が見直されていく必要がある。
著者
杉山 貴士
出版者
佛教大学
雑誌
福祉教育開発センター紀要 (ISSN:13496646)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.165-179, 2015-03-31

昨今、性的マイノリティがメディアを通じて見聞きする機会が増えている。性同一性障害が「性的違和」に変更となり、地方議員や国政に進出する当事者も現われている。さらに最近は「LGBT 市場5.7 兆円」に代表されるように、市場価値を持つゲイがクローズアップされ、消費に旺盛な当事者像が出される一方で、自尊感情が低く「ゲイの自殺企図率は異性愛者の6 倍」という当事者像も出される。そうした狭間で実際に多くいるはずの「地域や組織で役割を果たして生計をなす当事者不在」となっている。 こうした現状で民医連職員としてゲイとして保健医療福祉専門職へ性的マイノリティ支援教育研修の機会を得た。地域や組織で働くゲイのありようを示しながら、研修の概要やポイントを整理し、研修によってどう行動変容があったのか受講者の声等を紹介する。同じ職場環境にいながら性的マイノリティ支援研究を進める当事者が行う研修の効用を考える。
著者
岡 恒忠
出版者
佛教大学福祉教育開発センター
雑誌
福祉教育開発センター紀要 (ISSN:13496646)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.99-109, 2018-03-31

2005年に独立型社会福祉士事務所を開業して、間もなく13年目を迎えようとしている。その間、成年後見制度に関わる業務、主として成年後見人等の受任を行い、成年後見制度に関する相談業務及び各種講師業等を行ってきた。成年後見人等の職務には大きく身上監護と財産管理とがある。それらの職務を行なうためには、本人を中心に家族・親族、家庭裁判所、行政機関、金融機関、福祉サービス提供事業者等との関係が生じてくる。本人及び各種機関等での業務を通した社会福祉士として学んだこと、更には伝えたいことを重度知的障害者の事例を通して報告する。社会福祉士民法第858条及び第859条成年後見制度利用促進本人の意思決定支援合理的配慮
著者
加美 嘉史
出版者
佛教大学福祉教育開発センター
雑誌
福祉教育開発センター紀要 (ISSN:13496646)
巻号頁・発行日
no.13, pp.117-132, 2016-03-31

本研究は戦後京都市の住所不定者対策を考察するものである。本稿では特に「浮浪者」の収容保護を行う更生施設「京都市中央保護所」の再編整備が行われた昭和30年代に焦点をあて、京都市の住所不定者対策がどのように展開されたのか考察した。当時、浮浪者は国際観光都市・京都の美観を損なう存在と見なされ、度重なる「狩り込み」による取り締まりを受けていた。特に稼働能力のある浮浪者に対しては狩り込みによる検挙、中央保護所における一時収容と他地域への移送がセットで行われた。浮浪者に対しては中央保護所への収容保護を前提とし、一時収容に制限・限定する市の住所不定者に対する保護行政の特殊な枠組みはこの時期に形成された。このような更生施設における短期保護を原則とした戦後京都市の住所不定者対策の基本的フレームワークは1990年代まで維持・継続された。住所不定者浮浪者更生施設京都市中央保護所生活保護