著者
千田 嘉博
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.103, pp.13-32, 2003-03

城郭プランは権力構造とどのように連関してできあがったのか。この問題を解くために、きわめて特徴的な城郭プランをもった南九州に焦点をあてて検討を行った。まず鹿児島県知覧城を事例に南九州の戦国期城郭の分立構造を把握した。そして城内に多数の武家屋敷が凝集し、それが近世の麓集落の直接の母胎になったことを確認した。ついで熊本県人吉城を事例に知覧城で確認した城郭構造ができあがった要因を検討した。この議論を進める上で重要なのは人吉城の城郭遺跡が完全な形で残されており、踏査を行うことで把握可能であったことである。そして『相良氏文書』や『八代日記』などの良好な史料を基盤として勝俣鎮夫と服部英雄が深めた戦国期相良氏の権力構造の問題を踏査成果とあわせることで再検討できたことである。この結果、人吉城の分立的な城郭プランは地形要因だけではなく、築城主体の権力構造の特色を反映してできたと結論づけた。そしてこうした築城主体の権力構造と城郭プランとの相関関係は日本列島の城郭・城下を遺跡に即して分析する都市空間研究を進める上で、重要な視座となることを指摘した。

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