著者
鈴木 勇一郎
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.155, pp.137-149, 2010-03

現代の日本では、さまざまなところでおみやげが売られているのを目にすることができるが、世界的に見れば必ずしも一般的な光景とは言えない。とりわけその土地の名物とされる饅頭や団子などの食品類の種類の豊富さは他に類を見ない。本稿では、このような近代日本のおみやげを近世からの展開をふまえ、鉄道の発達との関係性から検討することを目的とする。近世日本では神社仏閣への参詣の際に、その証としてのおみやげが発達したが、その多くは、軽くて嵩張らない非食品であった。また神社仏閣の門前や街道筋などでは饅頭や団子などの名物がさかんに売られるようになっていたが、基本的にその場で食されるもので、おみやげとされるものではなかった。明治時代になり鉄道が開通し旅行時間が短縮されると、これら近世以来の名物は持ち帰りができるおみやげに転化していくようになった。その際には、駅構内での販売権の確保が知名度向上の大きな要素であったが、同時に保存性の向上や容器の改良など、おみやげとするのにふさわしい形へと変容していった。こうした創意工夫を奨励し、知名度の向上に大きな役割を果たしたのが、各地で開催された博覧会や共進会であった。このように、近代日本のおみやげは前近代からの系譜の上に成り立ちつつも鉄道や博覧会といった近代的な装置を媒介として独自の展開を遂げていったことが大きな特徴といえる。Study of Souvenirs in the Modern Period : Focusing on Tokaido

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