- 著者
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田中 則仁
Tanaka Norihito
- 出版者
- 神奈川大学経営学部
- 雑誌
- 国際経営論集
- 巻号頁・発行日
- vol.51, pp.1-13, 2015-03-31
2016年の日本経済は、第3次安倍政権の4年目で国内外の課題に直面した年明けを迎えた。ヨーロッパの経済動向をみると、ギリシャ経済危機は依然として不安材料であり、アメリカの金利引き上げへの方向転換は、世界の金融資本市場での資金をアメリカ国内に引き寄せることになるであろう。その結果、アジア地域の資金がアメリカへと流出し、新興国の資金難を引き起こす懸念が強まっている。国際市場での取引が多い企業にとって、2016年は事業活動に多大な影響を持ついくつかの新制度が始まる年でもある。中国主導で署名が整ったアジア・インフラ投資銀行(以下、AIIB)は、アジア地域のインフラ整備に大きな役割を果たすであろうし、そのための新規需要も見込めよう。また環太平洋経済連携協定(以下、TPP)が2015年10月、5年越しの通商交渉期間を経て大筋合意に達した。さらに2015年12月末には、アジア共同体が正式にスタートし、その中の大きな柱であるアセアン経済共同体(以下、AEC)は、域内10か国のモノの国境を引き下げ市場の活性化を導くであろう。本稿では、これらアジア地域のインフラ形成が、今後どのようにして企業環境に影響を与えるか、また企業はどのような視点で新制度に対応すべきかを考察していく。研究論文