著者
浅見 克彦
出版者
和光大学表現学部
雑誌
表現学部紀要 (ISSN:13463470)
巻号頁・発行日
no.14, pp.9-26, 2013

時間SFは、しばしば型破りな言説構成をとりながら、特異な時間世界を描き出す。この時間世界のありようは、時代的な隔たりを越えて、現在の文化に瀰漫する意識と、いくつかの点で通じあっている。例えば、「反復ループもの」は、社会の歯車として同じようなことを繰り返す現代人の情況に重なる。また、「枝分かれする世界」の物語は、不確定な時の流れに翻弄され、意志と自由を骨抜きにされた私たちの実情を映し出す。さらには、「因果ループ」を焦点とした作品は、物事の真正さと価値の根拠を空洞化させてゆく、ニヒルな文化意識と共鳴しあっている。本稿は、こうした現代の時代意識との照応を確認することを通じて、時を隔てて現代と共振しあう、時間 S Fの不思議な魅力を詳らかにしようとするものである。

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こんな論文どうですか? 時間SFとニヒリズム : 価値意識の惑乱(浅見 克彦),2013 https://t.co/1dJhyiuuEq 時間SFは、しばしば型破りな言説構成をとりながら、特異な時間世界を描…

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