- 著者
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坂井 弘紀
- 出版者
- 和光大学表現学部
- 雑誌
- 表現学部紀要 (ISSN:13463470)
- 巻号頁・発行日
- no.16, pp.41-60, 2015
日本の民話・伝承について考えるとき、これまで多くの研究者が指摘してきたように、中央ユーラシアの遊牧民の民間伝承を避けて通ることはできない。本稿では、ユーラシアのテュルク系民族に語り継がれてきた『アルパムス・バトゥル』、『ナンバトゥル』・『エメラルド色のアンカ鳥』、『勇士エディゲ』、『ジャルマウズ・ケンピル』、『大ブルガルのクブラトの遺訓』などを取り上げ、日本に、これら中央ユーラシアの伝承・民話とよく似た伝承・説話が存在することを具体的に提示した。これらの話は、中央ユーラシアと日本の民話・伝承の比較研究に大きな示唆を与える適例であるといえよう。古来、遊牧騎馬民が駆け巡った、アルタイ地方を中心とする中央ユーラシアの草原地帯に、日本の民間伝承の起源を解く鍵があるかもしれない。本稿は、それを解くための「たたき台」となるはずである。