著者
渡部 淳
出版者
北海道文教大学
雑誌
北海道文教大学論集 = Journal of Hokkaido Bunkyo University (ISSN:13454242)
巻号頁・発行日
no.17, pp.65-77, 2016-03

東日本大震災と福島第一原子力発電所事故の発生から5年,当時は国内外の人々から日本社会はこれを機に大きく変わってゆくのではないかと思われたが,社会の意識や世論の変容とは解離した,国会での独断・独善的な議論や政策決定が矢継ぎ早に行われている現状は,当初の予想とは裏腹にこの国の民主主義の危機的段階を示唆している.本論は,この日本において民意が政治や政策に反映されない原因を,議会や行政の外側にある一般社会の側に,自らの意思を伝達し形にしていく仕組みと文化が欠如しているためであると考える.どのようにしたら日本の民主主義が活性化するのか,そしてそのために社会科学にどのような貢献ができるのかを,次の3点を中心に考察する.まず,欧米社会における政治的NGO の存在と役割について触れ,アメリカの事例から日本にはまだ社会の中に政治のNGO 的なものが欠けていると主張する.次に,ベックのリスク社会論におけるサブ・ポリティクスの議論を手がかりに,新しい社会運動にとっての司法とメディアの役割の重要性について整理する.最後に,日本のメディア上に現れる政治的コミュニケーションの公共圏の探索と分析に向けた方法論を,政治学的・メディア学的視点から議論する.

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