著者
森田 弘行
出版者
北海道文教大学
雑誌
北海道文教大学論集 = Journal of Hokkaido Bunkyo University (ISSN:13454242)
巻号頁・発行日
no.21, pp.17-28, 2020-03-20

新美南吉の「ごんぎつね」は,現在小学校4 年生の国語の教科書にすべて掲載され,数多くの授業実践が行われている.しかしながら,子供たちが教科書で学んでいる「ごんぎつね」は,草稿の「権狐」と,同じものではない.なぜなら,教科書に掲載されている「ごんぎつね」は,鈴木三重吉の添削によって,大幅に改変された「ごん狐」とほぼ同じものだからである.そこで,本論文では「ごんぎつね」「ごん狐」「権狐」の三つの作品を比較,検討しながら,子供の素朴な疑問に焦点を当て,教師に必要な素材研究について論じた.また,新美南吉の生い立ちや生まれ育った愛知県半田市岩滑の地域社会における伝承や歴史などにも言及しながら論を展開した.
著者
岡本 佐智子
出版者
北海道文教大学
雑誌
北海道文教大学論集 (ISSN:13454242)
巻号頁・発行日
no.6, pp.121-135, 2005-03
被引用文献数
1
著者
梅津 徹郎
出版者
北海道文教大学
雑誌
北海道文教大学論集 = Journal of Hokkaido Bunkyo University (ISSN:13454242)
巻号頁・発行日
no.19, pp.89-101, 2018-02

本稿では地域教材である「昆布」に焦点をあて,教育内容と教材の一般性について検討した.歴史教科書の幕末明治史が政治史,事件史に偏っている点をあらため,商業資本の形成に寄与した「北前船」の活動と幕末雄藩の「薩摩藩」の財力形成を促した「昆布の密貿易」,さらにその担い手となった「富山の薬売り」などを取り上げ,教授プランの作成を試みたものである.なおこのプランは高校教育における日本史および総合的学習の時間を想定して作成したものである.
著者
山口 智恵子 吉田 直美 高岡 哲子
出版者
北海道文教大学
雑誌
北海道文教大学研究紀要 = Bulletin of Hokkaido Bunkyo University (ISSN:13493841)
巻号頁・発行日
no.41, pp.87-95, 2017-03-15

本研究の目的は,わが国の高齢者介護予防プランに関するケアマネジメントの研究動向の明確化と今後の課題を検討することである. 文献抽出は,医学中央雑誌web 版(2006 ~ 2015 年)で,keyword「介護予防ケアマネジメント」と「介護予防プラン」を単独で,「高齢者」「介護予防」「ケアマネジメント」でand 検索を行い原著論文の絞込みをした.分析対象は,得られた文献中19 件であった.文献はマトリックス方式を用いて整理した.この結果,文献の掲載年別では2011 年が最も多く,2006 年の介護保険改正法の全面施行に伴う介護事業効果の見直しに関連した研究などが行われていた.対象者及び協力者は「高齢者」が多く,次いで,「三職種(社会福祉士,介護支援専門員,保健師)」,「地域包括支援センターの職員」が多かった.文献の中心テーマは【実態把握】と【システムの構築】が抽出された. 本研究の結果,短期間に見直し改正が行われる政策動向に伴い,現状の把握を行いながらも,システムの構築をめざす状況が明らかとなった.今後も当事者である高齢者や多職種との調整などの中心的役割を担う看護職者を対象とした実態把握研究と,システムの構築に関わる介入研究が継続的に行われる必要がある.
著者
白戸 力弥
出版者
北海道文教大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2021-04-01

手首関節部の骨折である、橈骨遠位端骨折の手術後は、痛みや手関節の可動域制限により、安全な自動車運転操作が困難となる。本研究では自動車運転シミュレータを用いて、橈骨遠位端骨折手術後の上肢を使用した両上肢による運転能力を経時的に定量化し、安全な運転再開がいつから可能か、またそれに必要な手関節の機能を明らかにする。これらより、橈骨遠位端骨折手術後の安全な自動車運転再開に関する指標の確立を目指す。
著者
大川 浩子 宮本 有紀 本多 俊紀
出版者
北海道文教大学
雑誌
北海道文教大学研究紀要 = Bulletin of Hokkaido Bunkyo University (ISSN:13493841)
巻号頁・発行日
no.46, pp.49-59, 2022-03-15

障害者の雇用は年々増加している.一方,国において就労支援に従事する支援者の質について,議論がされている.我々は,就労支援機関の職員にとってワーク・エンゲイジメントを高める仕事の資源であり,医療職の離職意向に影響を及ぼす要因でもある管理職について注目した.今回,地域の就労支援機関の管理者を対象にインタビュー調査を行い,管理職の現状と課題についてテキストマイニングを用いて検討した.対象は地域の就労支援機関で勤務する管理者12 名である.2019 年11 月から2020年8 月にかけて,現在の所属機関での人材育成や組織に関する課題を含めたインタビューを60 分程度実施し,インタビューデータを逐語録にし,テキストマイニングを行った.テキストマイニングでは,対象の属性による傾向を見ることを目的に定量的に分析を行った.管理者の所属機関の事業形態,所属法人の役員兼務の有無,法人規模の属性を外部変数としてコードのクロス集計を行った結果,【職員教育】【管理業務】【職員採用】に関しては属性問わず取り組みや課題があると思われたが,【収支状況】【人事システム】【役割】に関しては属性による違いがあることが考えられた.
著者
中田 真依 服部 ユカリ Mai Nakata Yukari Hattori 北海道文教大学人間科学部看護学科 旭川医科大学医学部看護学科
出版者
北海道文教大学
雑誌
北海道文教大学研究紀要 (ISSN:13493841)
巻号頁・発行日
no.39, pp.39-50, 2015-03

本研究の目的は,急性心筋梗塞で入院中にせん妄を体験した患者の思いを明らかにすることである.闘病記録をnarrative と位置づけ,せん妄に関連のある内容を記録文書データとして収集し,テーマ分析方法を用いて分析した.分析の結果,シークエンス毎に3 つのコアテーマ,テーマ,サブテーマに分類された.コアテーマの《せん妄を発症するまでの思い》からは10 テーマ,《せん妄からの回復過程における思い》からは8 テーマ,《せん妄体験の想起と総括》からは4 テーマが導かれ,表面化されず患者自身しか知り得ない様々な思いが明らかになった.せん妄発症前は束縛恐怖など複数の苦痛や不安が存在し,せん妄発症後は断片的なせん妄の記憶,精神の弱さなどの否定的な思い,長期的なせん妄の余韻,自責の念や葛藤が存在していた.また,患者は家族や医療職者に対する感謝の思いを抱き,時間経過とともに病を克服しながら人生における貴重な体験と意味づけ,narrative を総括していた.これらのことから,患者が抱く様々な思いの存在に着目し,共感的姿勢で関わる重要性および,術前にせん妄の知識を提供するなどの予防的対応,早期に回復できるような個人に適した看護の必要性が示唆された.The objective of this study is to understand patient feelings after experiencing delirium whilehospitalized due to acute myocardial infarction. Using hospital diaries as narratives, we collected descriptions related to delirium as documented data, and analyzed these using thematic analysis. The analysis allowed the data to be classified into three core themes, themes, and sub-themes. From the core themes, we extracted ten themes from "feelings up to the development of delirium", eight from "feelings during the process of recovery from the delirium", and four from "recollections and summary of the delirium experience", which showed a variety of internalized feelings which only the patient could know. It was found that the patient suffered from different fears and anxieties such as the fear of being restrained before developing delirium. After delirium had developed, the patient had only a fragmental memory of the delirium, negative attitudes such as weakness of will, aftereffects after long-term delirium, feelings of remorse, and mental conflicts. The patient showed feelings of gratitude towards the family and medical professionals and overall viewed the experience as a positive life experience in overcoming the illness in the course of time. These findings suggest the importance of providing nursing care withempathy and paying attention to the variety of feelings of patients, as well as the necessity of proactive action, including providing information of delirium before surgery, and personalized nursing care to enable a speedy recover.
著者
美馬 正和 堀 允千 鈴木 幸雄
出版者
北海道文教大学
雑誌
北海道文教大学論集 = Journal of Hokkaido Bunkyo University (ISSN:13454242)
巻号頁・発行日
no.22, pp.135-146, 2021-03-15

本稿では日本の社会的養護の改善を促し,家庭養護や施設養護の重要性を確認する契機となったホスピタリズム論争に焦点を当て,先行研究では深く論究されていないホスピタリズム論争の整理を行い,その成果と問題点及び課題を明らかにした.その結果,ホスピタリズム論争の成果は,日本で初めて本格的な施設養護の養護論が議論され,3 つの養護理論が誕生したことである.だが,深い議論が伴わないままで終結していた.そのことによって,職員を含めた全体的な議論になっていなかったのであった.今後の課題としては,永続的な親機能に対する科学的知見を蓄積することであった.
著者
大川 浩子 本多 俊紀
出版者
北海道文教大学
雑誌
北海道文教大学研究紀要 = Bulletin of Hokkaido Bunkyo University (ISSN:13493841)
巻号頁・発行日
no.42, pp.85-94, 2018-03

近年,就労支援に携わる支援者の人材育成における課題が指摘されている.特に,大半の支援者は実務に携わるまで就労支援に関する知識にふれる機会がなく,支援者としての知識やスキルの獲得には雇用事業所の人材育成が影響すると思われる.今回,我々は就労支援に携わる人材育成の現状と課題を検討する目的で,全国の就労移行支援事業所470ヵ所の管理者を対象にアンケート調査を行った.回収率は51.8%(243ヵ所)であり,回答事業所の事業形態の内訳は,就労移行支援のみの事業所が32ヵ所,多機能型事業所が201ヵ所であった.この二つの事業形態間において,多機能型事業所は事業規模が大きく,管理者の経験年数(就労支援,管理職経験)が長い傾向が認められた.更に,研修システム,及び,研修受講内容,人材育成の課題についても,事業形態間で違いが見られた.これらの結果から,就労移行支援事業所における人材育成の課題は事業形態により異なる可能性があり,その背景として,事業所の業務内容や運営法人の規模の違いが考えられた.従って,就労移行支援事業所における人材育成は,事業形態にあわせた取り組みが必要であると思われた.
著者
岡本 佐智子 Sachiko Okamoto 北海道文教大学外国語学部国際言語学科
出版者
北海道文教大学
雑誌
北海道文教大学論集 (ISSN:13454242)
巻号頁・発行日
no.13, pp.105-118, 2012-03

少子化が進むシンガポールでは、2000 年代に日本よりもはるかに速いスピードで高齢化社会に移行することが予測されている。限られた人口と狭い国土、乏しい天然資源の小国は、外資と外国人労働力に依存して経済成長を遂げてきた。しかし、近年の外国人労動者の急増は、職を奪われる、住宅取得が困難になった、などといった国民の不満が大きくなるばかりである。 シンガポールが今後も競争社会を貫き、あくまで経済を追及していくのであれば、人口老齢化を防ぐために移民や外国人労働者の受け入れ継続は避けて通れない。他方、出生率の低下に歯止めがかからないまま移民受け入れに門戸を閉ざすのであれば経済発展も望めないし、誰が高齢者を支援するのかという問題が待っている。先進諸国が直面している少子高齢化の中でも、シンガポールのような小国の人口・移民問題は国家の存続にも関わってくる。
著者
金丸 雅子
出版者
北海道文教大学
雑誌
北海道文教大学研究紀要 = Bulletin of Hokkaido Bunkyo University (ISSN:13493841)
巻号頁・発行日
no.42, pp.51-61, 2018-03-15

10年ぶりに改訂された幼稚園教育要領が平成29年3月に告示され,1年間の周知期間を経て平成30年度より施行される.新幼稚園教育要領においても,幼稚園教育は環境を通して行うものであることが基本とされ,また,重視する事項等においてもこれまでの基本的な方向性は維持されている.今回の改訂で最も大きなポイントと言えるのは,新たに,幼児教育と小学校以降の教育を貫く3つの柱を基本に,「幼稚園教育において育みたい資質・能力」が示されたことである.更には,それらをベースとした「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」10項目が明記され,これらの資質・能力の背景には,世界的な教育課題でもある「非認知能力」の育成についての考え方がベースにあるとされている.本稿では,「非認知能力」の育成を重視する新幼稚園教育要領における,モンテッソーリ教育の有効性について考察を行った.その結果,モンテッソーリ教育を受けた子どもたちについてのデータ等により,わが国の現行の幼稚園教育の枠組みにおいて多くの有効な示唆を持つと思われるモンテッソーリ教育の科学的根拠と具体的方法が,新幼稚園教育要領の実現においても有効であることが示唆された.
著者
大川 浩子 遠藤 芳浩 塩澤 まどか 船本 修平 本多 俊紀
出版者
北海道文教大学
雑誌
北海道文教大学研究紀要 = Bulletin of Hokkaido Bunkyo University (ISSN:13493841)
巻号頁・発行日
no.45, pp.23-35, 2021-03-15

近年,パーソナル・リカバリーの中の客観的リカバリーの一つに就労が考えられている.しかし,先行研究において,就労とリカバリーの関係は量的手法と質的手法による結果が異なっている.今回,我々は,就労とリカバリーの関係を量と質の両側面から検討するために,就労している障害当事者に対し,自己記入式のアンケート調査とインタビュー調査を行い,検討した.まず,量的な検討としてUWES-J 短縮版とSISR-B を用いたが,両者の相関は認められなかった.また,質的な検討としてインタビュー内容をUWES-J 短縮版とリカバリーの段階(SISR-A)を外部変数としてテキストマイニングを行った.その結果,ワーク・エンゲイジメントのレベルとリカバリーの段階ごとの文章の内容はポジティブ,ネガティブの割合が異なって現れることが示されたが,就労とリカバリーの関係を直接検討までに至らなかった.今後,就労とリカバリーの関係を検討するうえで,①就労のとらえ方,②リカバリーの定義ととらえ方,③研究協力者の協力した時期の3 点が課題になることが考えられた.