著者
数岡 孝幸
出版者
日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.110, no.5, pp.298-305, 2015-05

日本で古くから造られている清酒は,現在では冠婚葬祭などに欠かせないほど生活に密着している。しかし,その消費量は1975年頃のピークを境に現在にいたるまで減少し続けている。その要因として,消費者が選択することができる酒類の増加,若者の酒離れ,主な清酒消費者の高齢化,さらには景気の低迷,娯楽の多様化にともなう酒類購入に企てられる費用の減少など様々な要因が考えられるが,消費者の嗜好の多様化もその一因であると考えられる。米,米麹,水を原料とし,総米に対する汲水歩合135%前後で仕込む清酒は,並行複発酵,高濃度仕込み,低温発酵,低カリウム濃度,乳酸酸性およびもろみ中での固形物の溶解といった他の酒類とは異なる清酒製造特有の発酵環境を形成している。清酒酵母は,そのような清酒製造条件下の酒母およびもろみで発酵力が強く良質の清酒を造る適性を持つ一群の酵母である。かつて日本には現存する数を大きく上回る清酒製造蔵が存在し,それぞれの立地条件(環境要因)や製造法,蔵付き酵母の性質で特色ある清酒が製造されてきたが,それは同時に造られる清酒の品質の不安定さを招いていた。近代的な清酒醸造では野生酵母に汚染されず良質な製品を安定して生産することを目的に,酒母製造工程において純粋培養した優良清酒酵母が多量に添加される。清酒の酒質は原料や製造工程における様々な要因によって変化するが,その中で清酒製造に使用する清酒酵母の種類は,清酒の酒質形成における重要な要素の一つである。

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