著者
山本 雄二
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Sociology, Kansai University (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.61-89, 2016-11

本稿は2013年度・関西大学研修員制度による研究成果の一部である。G.H.ミードの考えは多くの場合、誤解され、変形された上で日本のアカデミズムに受容されてきた。どのように変形されてきたのかを、ミードのオリジナルテクストの語用論的分析によって明らかにし、またどのように理解されるべきかもまた示した。同時に、テクストの日本語への翻訳そのものが無理解と通俗的発想とによってすでに変形されているかについても実例を示しながら明らかにした。This study focuses on the concept of the "generalized other", which was introduced by George Herbert Mead. Although this concept is recognized as being important to the theory of the self, it is often explained based on misunderstanding of itself in Japan. "Generalized other" has been thought as taken by an individual person by mean of generalizing particular attitudes of other members: however Mead's text indicates that it is taken by each individual through one's direct experience of a social act with other members who have attitudes of their society as a whole. The author examines the characters of this misunderstanding by verifying Mead"s text and, at the same time, indicates that it is inevitably accompanied with the ignorance of the fact that the experience of taking the "generalized other" is a physical experience, as well.G. H. ミードのgeneralized otherの概念は自我論にとっては欠かせない概念であるにもかかわらず、わが国の社会学関係の事典や研究苦には誤解に甚づく説明と思われる記述がすくなくない。本稿はこの誤解の性格をミードのMind, Self. & Societyにおけるgeneralized otherの語用論的分析から明らかにする。さらにこの誤解と同じ前提、すなわち「一般化された他者」とは複数の他者が私に向ける態度や期待を一般化したものであるとの前提が翻訳晋にもまた共有されていることを示す。以上の分析を通して新たに明らかになったのは、通俗的な説明においては「一般化された他者」の態度を個人が取り入れる契機となる社会的行為の身体性もまた同時に無視されているということである。

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