- 著者
-
松田 光太郎
- 出版者
- 千葉大学大学院人文社会科学研究科
- 雑誌
- 千葉大学人文社会科学研究 (ISSN:18834744)
- 巻号頁・発行日
- no.25, pp.91-97, 2012-09
本稿は今村啓爾編『異系統土器の出会い』の書評である。土器研究の第一線で活躍している8人の共同研究者の研究論文(事例・第2~9章)と研究の中心者であり編者でもある今村氏の総括的論文(第1章)からなっている。土器には系統があり、土器が移動することで異なった系統の土器が出会う。第1章の総括的論文では、本書の目的が述べられると共に、以下の研究論文(事例)の内容を抽出・分析し、移動の類型化が試みられている。研究論文では第3~5章は縄文時代中期・後期、第1・6・7章は弥生時代から古墳時代前期、第8章は北海道のオホーツク・擦文を対象とした土器の型式学的研究が展開され、遠距離間を中心とした土器の動き・影響関係、さらにはその背後にある人の動きに対する考察が述べられている。また第9章は土器の土である胎土の分析研究が掲載されている。本稿ではこうした本書の内容をまとめ、その成果や課題について述べる。