著者
和泉 ちえ
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
千葉大学人文社会科学研究科研究プロジェクト報告書 (ISSN:18817165)
巻号頁・発行日
no.269, pp.15-54, 2014-02-28

千葉大学大学院人文社会科学研究科研究プロジェクト報告書 第269集 『古代地中海世界における文化受容の諸断面』保坂 高殿 編前5世紀後半アテナイは「全ギリシアの知恵の殿堂」(Plato, Prot.337d)として地中海世界に君臨するが,その学問伝統の根は,アテナイ固有の大地に由来するとは言い難い.当時アテナイは,エーゲ海東西の新旧文化圏の諸力学を反映する巨大な渦動の中心地として機能しており,そこに吸い寄せられた知的諸成果は,そのほとんどが外来種であった.本稿は,エーゲ海東岸の古来の文化的芳香を身に纏うソクラテスの知的遍歴を再考しつつ,また生粋のアテナイ貴族プラトンが試みた西方新勢力との文化折衝の顛末に目を向けながら,マケドニア由来のバルバロイ的世界観を背負う非アテナイ人アリストテレスによる学問系譜論に内在するイデオロギー的諸問題を論じ,古典期アテナイにおける学問伝統の諸断面を,新たな角度から炙り出したいと思う.

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