著者
高橋 孝次
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
千葉大学人文社会科学研究 (ISSN:18834744)
巻号頁・発行日
no.32, pp.13-28, 2016-03

〈文壇〉からの孤立というイメージによって強く価値づけられてきた稲垣足穂だが、大正末から昭和初期にかけては、〈文壇〉という文学場において、「新時代」を代表する作家として登記された存在だった。本稿では作家自身の証言に依拠するのみでほとんど検証されてこなかった〈文壇〉時代の稲垣足穂の姿を当時の時評や合評、新たに発見された資料、同時代言説などから再構築することを目的とする。滝田樗陰と「中央公論」、佐藤春夫との破門問題、中村武羅夫と「新潮」、新感覚派と「文芸時代」といった稲垣足穂と〈文壇〉を繋ぐ人々との関わりを再検証し、当時の足穂がいかにして〈文壇〉での位置を獲得していったかを裏付ける。加えて石野重道と猪原太郎という二人の友人をめぐる「オリジナリティ」の問題を採り上げ、足穂の送った二つの抗議文と、それに対する〈文壇〉の反応から足穂の「新しさ」がどのように認知、受容され、消費されていったのかを明らかにする。

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