著者
新井 克弥
出版者
関東学院大学[文学部]人文学会
雑誌
関東学院大学文学部紀要 (ISSN:02861216)
巻号頁・発行日
no.117, pp.173-188, 2009

本論文は J. F. リオタールによる〈物語論〉の、わが国における受容と展開についての考察である。〈物語論〉は80年代後半にわが国に紹介されて以来、リオタールの概念とは異なった複数の解釈によってこれが導入され、その混乱が現在も続いている。本論ではその導入過程を辿ることで生じた解釈のねじれを明らかにし、これを修正、統合しつつ、次代の分析装置としての〈物語論〉の構築を試みていく。展開は以下の通り。まず雛形となるリオタールの〈物語論〉を示し、次いでわが国へのローカライズとして、時系列的に大塚英志と大澤真幸の物語論を取り上げる。さらにこれら二つの物語論を折衷するかたちで登場した東浩紀の〈データベース消費論〉を概観し、その理論的な矛盾を〈感情の構築主義〉と大澤真幸の議論を援用して脱構築することで、わが国における今日の〈物語論〉=〈データベース消費論〉の可能性について考察する。最終的に提示されるのは物語論の二つの視座の統合としての物語の今日的態様と文化社会学の概念装置としての〈物語論〉の可能性である。

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