著者
新井 克弥 Katsuya ARAI
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 = Bulletin of Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.1-12, 2007-03-20

80年代、分衆/少集論を中心に展開した消費社会論は現代思想、マーケティング、社会学等様々な分野で議論と対象となり、その間続いたバブル景気の理論的な援護射撃を演じた。だがバブル崩壊とともに、その有効性は失われ、これら議論が展開されたこと事態がすでに過去のこととなっている。そこで、本論ではこのような消費社会論がなぜ発生したのか、そして、どのような変容を遂げ今日に至っているのかをボードリヤール理論の受容過程を辿ることで明らかにすると同時に、現代人のコミュニケーション行動との関連での今日的な有効性について考察する。
著者
新井 克弥
出版者
宮崎公立大学
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 (ISSN:13403613)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.1-16, 2004

これまでコミュニケーション論において焦点をあてられてきたのは情報の伝達的側面であった。どのような方法によれば相手に情報が伝わるかを課題に、機械における情報伝達プロセスをシミュレートする形で検討がなされてきた。だが、情報化社会が進展する今日、このような戦略は有効性を失いつつある。情報が膨大化、価値観が多様化することで、人間間の情報伝達においては情報が正確には伝わらないことが基本となってしまったからだ。それでも人間はコミュニケーション動物であり、いかなる形であれ他者と関わりあい続ける欲求がなくなることはない。本論ではF.マルチネの、コミュニケーション機能のオルタネティブである表出的側面についての議論を検討することで、情報が伝わらない現代人における新しいコミュニケーションの有り様を提示している。
著者
新井 克弥
出版者
関東学院大学[文学部]人文学会
雑誌
関東学院大学文学部紀要 (ISSN:02861216)
巻号頁・発行日
no.117, pp.173-188, 2009

本論文は J. F. リオタールによる〈物語論〉の、わが国における受容と展開についての考察である。〈物語論〉は80年代後半にわが国に紹介されて以来、リオタールの概念とは異なった複数の解釈によってこれが導入され、その混乱が現在も続いている。本論ではその導入過程を辿ることで生じた解釈のねじれを明らかにし、これを修正、統合しつつ、次代の分析装置としての〈物語論〉の構築を試みていく。展開は以下の通り。まず雛形となるリオタールの〈物語論〉を示し、次いでわが国へのローカライズとして、時系列的に大塚英志と大澤真幸の物語論を取り上げる。さらにこれら二つの物語論を折衷するかたちで登場した東浩紀の〈データベース消費論〉を概観し、その理論的な矛盾を〈感情の構築主義〉と大澤真幸の議論を援用して脱構築することで、わが国における今日の〈物語論〉=〈データベース消費論〉の可能性について考察する。最終的に提示されるのは物語論の二つの視座の統合としての物語の今日的態様と文化社会学の概念装置としての〈物語論〉の可能性である。
著者
新井 克弥 Katsuya ARAI
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 = Bulletin of Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.1-15, 2004-03-20

大平健著『やさしさの精神病理』(岩波新書、95)のテクスト・クリティーク。精神科医、大平は、患者との対応の中から、70年代以降、新しい意味を持ったやさしさ=ヤサシサが出現したと指摘する。70年代、やさしさはモノや人個々の性質をあらわす用語から、他者との連帯を志向することばとなったのである。当初、それは、ことばを介した他者介入型の「やさしさ」として出現するが、80年代に入り、”沈黙”を原則とする相互非介入型の”やさしさ”へと転じていく。すなわち、相手の気持ちを察し、相手と同じ気持ちになってメッセージを共有するスタイルから、相手の領域に入り込まないように気づかい、空間を共有するスタイルへの変容である。本稿ではこのような大平の指摘する新しい”やさしさ”を、情報化社会・グローバル化社会におけるコミュニケーションの新しいスタイルと捉え、その可能性について、中野収のカプセル人間論、およびN.ルーマンのダブル・コンティンジェンシー理論を援用しながら考察。その社会的適応性を評価し、解り合えないことを了解し合うコミュニケーション、および共鳴・共振だけで結ばれるコミュニケーションの重要性を説いた。
著者
新井 克弥
出版者
宮崎公立大学
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 (ISSN:13403613)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.1-12, 2006

80年代、分衆/少集論を中心に展開した消費社会論は現代思想、マーケティング、社会学等様々な分野で議論と対象となり、その間続いたバブル景気の理論的な援護射撃を演じた。だがバブル崩壊とともに、その有効性は失われ、これら議論が展開されたこと事態がすでに過去のこととなっている。そこで、本論ではこのような消費社会論がなぜ発生したのか、そして、どのような変容を遂げ今日に至っているのかをボードリヤール理論の受容過程を辿ることで明らかにすると同時に、現代人のコミュニケーション行動との関連での今日的な有効性について考察する。