著者
多ヶ谷 有子
出版者
関東学院大学[文学部]人文学会
雑誌
関東学院大学文学部紀要 (ISSN:21898987)
巻号頁・発行日
vol.134, pp.71-92,

1901年英国のY. PowellがBeowulfと渡辺綱伝説の類話性を指摘、同じ頃東大で小泉八雲が同様な指摘を講義、1903年G. L. Kittredgeが、1909年W. W. Lawrenceが両者の類似に言及した。1907年栗原基らは両者の関連に興味を示した。1929年、島津久基は両者の関連を詳細に論じ、伝播を前提する必要性を否定したが、呼応して、瀧川政次郎、藪田嘉一郎は伝播を主張した。1998年、黒田彰は島津説を尊重しつつ、なお何らかの関連性の可能性を論じた。筆者はBeowulfと日本の古典文学との類似モチーフを多年論及して来たが、本稿では『古事記』の「国譲り譚」と『出雲国風土記』の「安木郷猪麻呂説話」を取りあげる。前者については、新来の神/英雄が在来の神/怪物と素手で闘い、相手の手/腕を害し、その結果在来の神/怪物は湖に逃走し、新来の神/英雄に追われて完敗し、国譲りが完成する/斃される、という類似がみられる。後者については、娘/息子を害された父/母が復讐し、斃した相手から片脛/片腕を奪い返し、相手の死骸を曝す、という類似が見られる。類話の収集と研究は継続されるべきであり、Beowulfと渡辺綱伝説の関連性もさらに検討されるべきである。

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