- 著者
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原田 拓馬
- 出版者
- 山口大学大学院東アジア研究科
- 雑誌
- 東アジア研究 (ISSN:13479415)
- 巻号頁・発行日
- no.15, pp.15-29, 2017-03
本研究の目的は、学校改革を引き起こす教師が、自身で立案した学校改革案を学校組織の意思決定の場において成立させることを目指し、実践している〈根回し〉に焦点化した上で、特に自己呈示戦略に着目し、その諸相を描き出すことである。本研究の方法として、ゴフマンの演技論的アプローチに依拠して、行為者個人による「振る舞い方」の諸相を持つ自己呈示戦略を分析した清水の枠組みを援用する。学校組織のフォーマルな意思決定の場での学校改革案の成立という目的のもと、その提案以前の段階でのインフォーマルな場で実践される〈根回し〉に焦点化し、そこで組織される自己呈示戦略が、いかなる諸相を持つのか、という点を分析する。本研究の知見は、次の2点である。第1に、学校組織の意思決定の場での学校改革案の提案以前の段階で、インフォーマルな場において実践される〈根回し〉とは、《秘匿性》という基本的特徴のもと、学校改革案の確実な成立を目指して実践されていることが明らかになった。第2に、その〈根回し〉として、学校組織の意思決定の場での権限を持つ存在に対し、学校改革案の成立への支援を促すべく、①《利益供与者》、②《理解者》、③《献身者》、④《秘密の暴露=共有者》という自己呈示戦略を組織していたこと、また、学校組織の意思決定の場で反対意見を出す可能性のある存在に対し、学校改革案の成立の妨害を阻止するために、⑤《相談者》という自己呈示戦略を組織していたことが明らかになった。