- 著者
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柴田 徳衛
- 出版者
- 東京都立大学都市研究センター
- 雑誌
- 総合都市研究 (ISSN:03863506)
- 巻号頁・発行日
- no.69, pp.219-230, 1999-09
国分寺市は人口10万余、日本に640ある都市の最も標準規模のものである。今から1250年ほどの昔、聖武天皇の詔により全国最大最壮麗の国分寺が七重の塔とともにここに建立され、東日本開発の拠点とされた。さて今は、多摩の一大中心として西武2線の出発駅と武蔵野線西国分寺駅とを持つとともに、JR特別快速や通勤特別快速により国分寺駅から新宿駅へ20分、都心へ30分の便宜さを持ち、豊かな緑とともに中上流の市民が多く住む。市税収入にも恵まれ、財政力指数も従来1.0を大きく超え、富裕団体視されてきた。ところが98年7月頃、突然マスコミに当市が「倒産の危機に瀕する自治体」の代表として登場してきた。90年代に入りバブル経済が破綻し、地方財政も緊縮を迫られたのに、当市は土木費を中心の大幅歳出を公債の大増発で続け、その借金の「つけ」(公債の元利償還)が大きく回ってきたからである。しかし今ここで歳出の効率化、財政緊縮の数年を頑張れば、市政に希望は大きい。上記恵まれた条件に加え、例えば21世紀の技術革新をリードする大きな研究頭脳を市内に3つも持っている。鉄道総合技術研究所(リニア・モーターカーを開発)、日立製作所中央研究所(電子工学の最先端)、小林理学研究所(音響学の中心)といった、どれも世界の最高水準を誇るものである。地方自治法第250条で、市債の発行は、事実上「当分の間」国の許可を得ねばならない。だが日本だけでなく、世界の金融情勢をみると、この「当分の間」はとっくに過ぎているようだ。世界の金融機関は、今皆少しでも安心で有利なところへ金を貸したがって鵜の目鷹の目でいる。ごく近いうちに、日本の優良な市財政には、世界の金融機関が日本の市債を争って引き受けたがる時代となろう。規制緩和・地方分権の声とともに、「株式会社国分寺市役所」的な形が濃くなり、株主(市民)が喜ぶ市政が発展すれば、市の人気(株価)も内外に高まることとなる。そうなれば、金融機関が争って良い条件の資金を貸してくれ、市民の喜ぶ事業がそれだけさらに沢山出来ることとなる。外からの人気も高まり、それだけ良い(高額所得の)市民も集まり、地価も上昇し、市民税や固定資産税の収入も増え、ますます良い仕事が出来、市政はさらに発展する。反対に市民が市政に関心を寄せず、市議会、市職員そして市政も怠けていれば、競争に負け、国分寺市は衰えてしまう。国分寺駅北口や西国分寺駅東口の再開発がゆっくりと、しかし着実に進み、市内商店街の活性化が進めば、当市は八王子、立川や吉祥寺に負けない多摩の一大経済中心になれる。市民そして市政当局が、国分寺がいかに恵まれた条件・可能性を持つかを自覚し、市職員の独創的働きでそれを実現させ、市民の聞から「市税を2倍に増額し、市政を大発展させ、市役所のサービスを3倍4倍よくさせろ。市職員の給与を2割3割と引き上げ、市民のために2倍3倍働きたがるようにさせろ」といった声が高まれば、市のこれからの限り無い発展が期待される。またそうした道を今から考え進めねばなるまい。21世紀、日本の市も競争の時代に入ろうとしている。市議会議員も議場での居眠りや利権漁りの暇はとてもなくなる。世界はすさまじい勢いで進んでいる。