著者
岩橋 宗哉
雑誌
福岡県立大学心理臨床研究 : 福岡県立大学大学院心理教育相談室紀要 (ISSN:18838375)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.55-73, 2014-03-31

本論文では、文学、民俗学等の知見を踏まえつつ、対象関係論的精神分析の観点から、古事記中巻の応神記を検討し、さらにこれまでの研究(岩橋,2014a,2014b,2014c,2014d,2014e)から、古事記中巻全体を考察した。 応神記については、衰退したコトの論理に代わって、調和や秩序を維持する原理として、人々を内側から制御する孝などの道徳や交わされた言への信頼が示される。 古事記中巻全体は、未知の領域に対する言事一致のコトの論理による万能的思考から、現実との接触によって現実についての認識を分化させながら、分化した2つに領域を渡すために<私>が形成されてゆく過程として、捉えることができた。最終的には、外部の未知に対しては、事象間の相互作用を理解し真実を求める<私>の動きへと、また、内部や人々に対しては、秩序と調和を維持するために、応神記に示された原理へと向かってゆく。 また、2つの分化した領域を渡すために<私>が機能するためには、対象と<異なること>、対象の存在を<認めること>、対象によって<信じられること>が重要であることなども示した。

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最初に読んだときは言いようのない違和感を覚えたものの、その後他の論文で記紀神話のスサノヲがユング心理学派の格好の題材になってきた歴史を知り、腑に落ちる。 https://t.co/x0x58lMEQc #CiNii

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