著者
若松 大祐
出版者
常葉大学外国語学部
雑誌
常葉大学外国語学部紀要 = Tokoha University Faculty of Foreign Studies research review (ISSN:21884358)
巻号頁・発行日
no.33, pp.1-11, 2017-03-01

本稿は、近代以来の日中両国において文化という概念が持った意味を概観する。1940 年代前半に蒋介石が自身の名義で出版した『中国之命運』(重慶:正中書局、初版 1943、増訂版 1944)では、文化が中華民族を形成するための重要なキーワードになっている。それは、古典的な文治教化と日本経由で西洋舶来のculture との混交であった。そこで、蒋介石が国家指導者として説いた文化という概念の意味を、半世紀来の日中両国の歴史的展開から考察してみたい。まずは先行研究によりつつ、近代以来の日本と中国で文化という概念がどのように形成され、どのような意味を持つにいたったのかを概観する。そして、こうした日中両国の歴史的背景を踏まえて、1940年代前半の中国における国家イデオロギーとしての文化の登場を意味づけよう。

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