- 著者
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餅川 正雄
- 出版者
- 広島経済大学
- 雑誌
- 広島経済大学創立五十周年記念論文集
- 巻号頁・発行日
- pp.255-291, 2017-07-31
一般消費税は,世界の多くの国で採用されている付加価値を課税ベースとしている租税である。国家の財政収入の確保という視点から,その位置付けが大きなものとなっている。大きな政府を前提として,付加価値税の存在を肯定的に捉える見方もある一方で,これを否定的に捉える見方も存在する。積極的論者も消極的論者も,実質的な租税負担者(担税者)である国民の視点から見ると,付加価値税は,所得税のように累進的な課税ができないため,非累進的(逆進的)であり,"vertical equity(垂直的公平)"が損なわれるということについて異論を唱える者は少ない。本研究では,消費税について学問上の諸類型に基づいて,一般消費税として分類される3つの単段階税(①製造者売上税,②卸売売上税,③小売売上税)と2つの多段階税(④取引高税,⑤付加価値税)の特徴について,納税モデル(tax payment model)を設定して理論的に考察し,それぞれの長所と短所を明らかにした。本研究では国民の視点から検討した結果,この消費税(付加価値税)が企業課税化していることを前提としても,またどのような類型の消費税を採用したとしても,あらゆる物品・サービスが消費税(付加価値税)相当額だけ値上がりすることは避けられず,国民に選択の余地は残されていないことが分かった。そうであるがゆえに、近い将来、消費税率を二桁代に引き上げるとしたら個人の担税力を度外視した不公平税制となり、国民の経済格差を拡大することに繋がる。それは日本国憲法の要請する応能課税原則を逸脱する恐れがあることを指摘する。1.はじめに 1.1 消費税の仕組み 1.2 日本の消費税の現状 1.3 問題意識 1.4 研究対象と研究方法等 1.4.1 研究対象 1.4.2 研究方法 1.4.3 研究の前提 2.学問上の消費課税の類型に関する研究 2.1 「直接消費税(direct consumption tax)」と「間接消費税(indirect consumption tax)」 2.2 「一般消費税(general consumption tax)」と「個別消費税(individual consumption tax)」 2.3 個別消費税の課税根拠(justification) 2.4 「単段階一般消費税((single-stage general consumption tax)」と「多段階一般消費税(multi-stage general consumption tax)」 2.5 消費税の諸類型の分類 2.6 一般消費税を採用する意義 3.納税モデルによる単段階一般消費税の研究 3.1 基本的な納税モデルの設定 3.2 単段階一般消費税の納税モデル 3.2.1 製造者売上税(manufacturer's sales tax)の考察 3.2.2 卸売売上税(wholesale sales tax)の考察 3.2.3 小売売上税(retail sales tax)の考察 4.納税モデルによる多段階一般消費税の研究 4.1 多段階一般消費税の二つの類型 4.2 多段階一般消費税の納税モデル 4.2.1 取引高税(turnover tax o/gross receipts tax)の考察 4.2.2 付加価値税(value-added tax)の考察 5.おわりに