著者
餅川 正雄
出版者
広島経済大学経済学会
雑誌
広島経済大学研究論集 = HUE journal of humanities, social and natural sciences (ISSN:03871444)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.29-50, 2020-03

「相続制度」は,死んでいった者が生前に所有していた財産を生きている者(配偶者や子など)へ移す仕組みであり,あらゆる社会制度の中で極めて重要な制度の一つである。しかし,死者(=被相続人)は,相続自体に関わることができないという冷酷な現実がある。そこで,法律を作ることで死者にも一定の範囲までは,遺産分配を支配できることを可能にした訳である。その最も簡単な方法が本論で考察する「遺言相続制度」である。我が国の民法第961条では,「15歳に達した者は遺言することができる」と規定している。そして,第963条で「遺言者は,遺言をする時においてその能力を有している必要がある」としている。この条文の「その能力」とは「遺言能力」のことであり,「意思能力」とされている。本研究で検討するのは,遺言相続における「自筆証書遺言」についての諸問題である。具体的には,次に示す三つの論点である。第一に「遺言者自身の『遺言能力』をどのように判断するのか?」という問題である。例えば,医師に認知症の疑いやその他の精神疾患があると診断されている場合などに,遺言能力をどのように判断するのかという問題がある。筆者は,精神能力(=意思能力)の有無は,医学的な観点から形式的・画一的に判断するものではなく,あくまでも法的な立場から遺言内容の難易を考慮して判断すべきであると考えている。第二に遺言書で「遺言執行者を指定した場合」の問題を考察する。2018(平成30)年の民法改正によって遺言執行者の権限が明確になった訳であるが,「遺産分割協議において相続人全員と受遺者が遺言書の趣旨に反する合意をして遺産分割をしたが,遺言執行者がそれに同意しなかった場合どうなるのか?」という問題がある。このケースでは見解が分かれており,その遺産分割は「同意がなければ無効である」という見解と「同意がなくとも有効である」という見解がある。筆者は「無効である」という見解を支持する。その理由は,無効であるとしなければ,遺言執行者を指定したこと(=遺言者の意思)が無意味になるからである。第三に「遺言書の一部を自書していて一部を他人に書いてもらっている場合,どう判断するのか?」という問題である。筆者は,「遺言全体のウェート説」を支持する。他人が書いた部分が付随的なものであり,その部分を除外しても遺言の趣旨が十分に表現されているものであれば「自筆証書遺言」として有効なものと判断してよいと考えるからである。1.はじめに 1.1遺言相続制度の意義 1.2問題意識 1.3研究の前提 1.4筆者の立場 2.遺言書の作成状況 2.1自筆証書遺言の方式緩和 2.2遺言能力の判断規準 2.2.1民法における遺言能力に関する規定 2.2.2医学的な観点からの遺言能力の判断 2.2.3法的な観点からの遺言能力の判断 2.2.4学説における遺言能力の判断 2.2.5判例における遺言能力の判断 2.3具体的な遺言事項 3.遺言の執行に関する考察 3.1遺言執行者の指定 3.2民法の改正による遺言執行者の権限の明確化 3.2.1遺言執行者を指定するメリットとデメリット 3.2.2遺言執行者の権限の明確化 4.自筆証書遺言の作成に関する考察 4.1自筆証書遺言の長所 4.2自筆証書遺言の短所 4.2.1遺言書の全文を自書 4.2.2添え手による自書の有効性 4.2.3日付・氏名の記載と押印 4.3自筆証書遺言かどうかの判断 4.4遺言内容の加除訂正 4.5自筆証書遺言の作成件数 5.遺産分割方法の指定と相続分の指定 5.1遺産分割方法を指定する遺言書の例 5.2相続分を指定する遺言書の例 5.3共同遺言に該当しない例 6.おわりに
著者
餅川 正雄
出版者
広島経済大学経済学会
雑誌
広島経済大学研究論集 = HUE Journal of Humanities, Social and Natural Science (ISSN:03871444)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.23-46, 2018-06-30

本研究は,現行の民法(相続法)における遺留分制度について,「法の正義(分配的正義:distributive justice)」の視点から,遺留分制度は今後も存続させるべきという立場で考察を加えるものである。この遺留分制度の内容は,特別受益や寄与分などの扱いがどうなるのかなど,法律の専門家でない一般の国民が相続の問題に直面した場合には,それが非常に分かりにくく複雑なものになっているという現実がある。それだけでなく,民法の立法上の不完全さもあって,国民の常識的な法律解釈の範囲を超えているという問題があると認識している。それは遺産相続について誰が何をどれだけ相続するのかという問題について,家族や親族間で争いが発生するという裁判が多いことが証拠である。|本論では,以下の5つの問題を考究する。第一に遺留分制度の存在理由(reason for existence)について歴史的に考察し,日本の遺留分法(民法規定)は,条文解釈においてローマ型の現物返還ではなくゲルマン型の価値返還と捉える方が理解しやすいことを論述する。第二に配偶者が子とともに相続人となる場合には,配偶者の遺留分が基礎財産の四分の一になるという現行の規定は,妻の通常の貢献分(二分の一)が確保できないという問題を指摘する。第三に直系尊属(父母・祖父母)だけが相続人になる場合,総体的遺留分率が三分の一になっているが,その他の場合には二分の一になっていることとの不合理があることを指摘する。第四に特別受益の持ち戻しの問題(生前に「特別受益」を受けた相続人があった場合)については,それを遺留分算定の基礎となる相続財産に算入するという説(算入説)と,算入しないという説(不算入説)があるが,筆者は算入説を支持することを設例によって論述する。第五に「寄与分」について認定は,民法では上限設定はないが,遺留分の争いの範囲ではひとまず棚上げして対応する必要があることを論述する。|遺留分に関する規定は,現行民法の採用している共同相続制度(joint inheritance system)において生ずる問題について十分な配慮がされていないという立法上の問題がある。それについては,現在,民法改正の準備が進められているところであるため,本研究においては今後の民法の改正に関する考察は対象外としている。
著者
餅川 正雄
出版者
広島経済大学経済学会
雑誌
広島経済大学研究論集 = HUE journal of humanities, social and natural sciences (ISSN:03871444)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.47-69, 2016-12

本研究の目的は,日本の一般消費税の"真像"を明らかにすることである。具体的な内容は,次の二つである。第一に,我が国の一般消費税の課税根拠を理論的に検討する。一般消費税は,事業者の生み出す付加価値(売上総利益)に担税力を見出して課税するものであり,間接税に分類される付加価値税の一種であると言われている。競争力や力関係において劣位に置かれている多くの事業者にとって消費税(相当額)を商品等の価格に転嫁することが難しい。そのため,一般消費税は間接税ではなく,負担者と納税者が同じという企業課税としての直接税と化しているという問題を指摘する。一般消費税は,最終的に国民の所得に帰着するものであり,その所得に一律課税を行うということは,日本国憲法の要請している「担税力に応じた応能課税」ではなく,逆進性の強い究極の不公平税制ではないだろうか。第二に,「転嫁」問題に焦点を当て,裁判例を基に検討することで,消費税の課税システム上の重大な欠陥を法律の視点から明らかにする。消費税は間接税であるがゆえに転嫁されることが予定され,それが前提になっている。しかし,消費税法において,事業者に対する転嫁の義務も権利も規定されていない。筆者は「転嫁しているのか否かは曖昧(不透明)な状況になっている」と考えている。その原因は「消費税の転嫁強制システムが存在していない」からである。本研究では,消費税の転嫁問題について,司法(裁判所)においてどのように判断されてきたのか,三つの判例を基に考察する。最後に,経済産業省の月次モニタリング調査を基に,消費税の転嫁拒否の問題を明らかにする。1.はじめに 2.研究主題の設定理由 3.問題提起 4.研究対象 5.租税の課税根拠(taxationrationale)に関する考察 5.1公平な課税に関する三つの学説 5.2課税ポイント分散論に関する考察 5.3一般消費税の課税根拠としての「担税力(tax-bearingcapacity)」 6.消費税を「消費者が負担する義務」についての考察 6.1裁判例Ⅰ消費税負担分の損害賠償請求事件 6.2裁判例Ⅰの考察 7.消費税を「消費者等へ転嫁する義務」についての考察 7.1税制改革法における転嫁についての規定 7.2裁判例Ⅱ損害賠償請求控訴,同附帯控訴事件 7.3裁判例Ⅱの考察 8.消費税を「不転嫁の場合における納税義務の発生」に関する考察 8.1裁判例Ⅲ納税義務免除の更正請求事件 8.2裁判例Ⅲの考察 9.消費税の転嫁拒否問題に関する考察 9.1消費税転嫁対策特別措置法 9.2転嫁拒否行為の具体例(消費税の転嫁状況に関する月次モニタリング調査) 9.3転嫁を阻害する表示の是正に関する特別措置 9.4価格表示に関する特別措置 9.5共同行為に関する特別措置 10.おわりに
著者
餅川 正雄
出版者
広島経済大学経済学会
雑誌
広島経済大学研究論集 = HUE journal of humanities, social and natural sciences (ISSN:03871444)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.53-75, 2018-12

本研究は,日本の養子縁組制度と法定相続の関係を考察することを目的としている。その理由は,養子縁組によって法定相続分は大きく変化することがあるからである。そこで,本研究では,第一に,なぜ養子制度があるのかを考察する。第二に「普通養子制度」と「特別養子制度」の目的とメリット・デメリットについて整理する。我が国の養子縁組制度の基礎的な内容について,特徴と問題点を明らかにする。第三に,代表的と考えられる養子縁組のケースとして次の4つの設例を基に法定相続分がどうなるのかを検討した。第1の設例として「孫養子」のケースを検討した。これは祖父が孫を養子とする場合であり,孫であると同時に子でもあるということになる。孫としての法定相続分と,子(養子)としての相続分の重複は認められることが分かった。第2の設例として,兄が弟を養子とする「兄弟間の養子縁組」のケースを検討した。この場合,兄が亡くなって相続が発生すると,弟には子としての立場と弟としての立場が併存することになる。この弟を養子にしたケースでは,弟は子(養子)としての立場から相続権を主張することができるのみとなることが分かった。第3の設例として,父親に実子と特別養子縁組の養子がいて,その二人が婚姻して子が生まれ,その後,養親である父親よりも先に養子が死亡したケースを検討した。実子と特別養子の間に子がいて,特別養子が死亡したので,配偶者である実子が2分の1,子は2分の1ということになる。第4の設例として,父親に実子と普通養子縁組の養子がいて,その二人が婚姻し,養子の実親と養親(X)が存命中に,養子が死亡したケースを検討した。この場合,配偶者である実子が3分の2,養親(X)が6分の1(=1/3×1/2),実親(Y)が6分の1(=1/3×1/2)となることが分かった。その理由は,養親関係と実親関係の間に差は生じないからであった。1.はじめに 1.1養子縁組制度の存在理由 1.2普通養子縁組と特別養子縁組 2.普通養子制度 2.1普通養子制度の利用目的 2.2普通養子縁組の要件 2.3養子縁組の形式的要件 2.4普通養子縁組の効果 2.4.1養子は嫡出子の身分を取得する 2.4.2養親が親権者となる 2.4.3相互に扶養義務を負う 2.4.4離縁後も養親と養子の婚姻は禁止される 2.5養子縁組のメリット 2.6相続税法上の養子数の限定 2.7養子縁組のデメリット 3.特別養子縁組制度 3.1特別養子縁組制度の意義 3.2特別養子縁組の目的 3.2.1環境継続性の原則 3.2.2兄弟姉妹不分離の原則 3.2.3子の意思尊重の原則 3.2.4母親優先の原則 3.3特別養子縁組の成立要件 3.4特別養子縁組の成立要件の考察 3.4.1実親の同意がある 3.4.2養親が25歳以上である 3.4.3養子が6歳未満である 3.4.4半年以上の監護(試験養育)がある 3.5特別養子縁組の問題点 4.普通養子縁組の運用状況 4.1養子縁組の件数 4.2相続資格の重複問題 5.代表的な養子縁組と法定相続の関係 5.1祖父と孫との養子縁組(孫養子) 5.2兄弟姉妹間の養子縁組 5.3特別養子縁組 5.4普通養子縁組 6.おわりに
著者
餅川 正雄
出版者
広島経済大学経済学会
雑誌
広島経済大学研究論集 = HUE journal of humanities, social and natural sciences (ISSN:03871444)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.47-73, 2014-03

4.広島県における中学生へのCareer Guidance 4.1 広島県の中学校卒業者の数 4.2 中学卒業後に就職した者の人数 4.3 中学校の進路指導の流れ 4.4 就職する生徒へのGuidance 4.5 高等学校へ進学する生徒へのGuidance 4.6 高等学校以外へ進学する生徒へのGuidance 4.6.1 高等専門学校(「高専」と呼ばれている学校) 4.6.2 高等専修学校(「専門学校」と呼ばれている学校) 4.6.3 各種学校 4.7 中学校教員のCareer Counseling 4.8 小括 5.公立高等学校のEnrollments Ratios 5.1 広島県の公立高等学校の学科別入学者比率 5.2 全国の公立高等学校の学科別入学者比率 5.3 広島県と全国平均の学科別入学者比率 5.4 小括 6.広島県における公立高等学校のAdmissions System 6.1 広島県の入学者選抜の実施時期 6.2 広島県の公立高等学校入学者選抜(Ⅰ) 6.2.1 選抜(Ⅰ)の募集割合について 6.2.2 調査書(内申書)の取り扱いについて 6.2.3 作文・小論文について 6.2.4 面接について 6.2.5 部活動などの実績について 6.2.6 欠席日数について 6.3 広島県の公立高等学校入学者選抜(Ⅱ) 6.4 広島県の公立高等学校入学者選抜(Ⅲ) 6.5 小括
著者
餅川 正雄
出版者
広島経済大学
雑誌
広島経済大学創立五十周年記念論文集
巻号頁・発行日
pp.255-291, 2017-07-31

一般消費税は,世界の多くの国で採用されている付加価値を課税ベースとしている租税である。国家の財政収入の確保という視点から,その位置付けが大きなものとなっている。大きな政府を前提として,付加価値税の存在を肯定的に捉える見方もある一方で,これを否定的に捉える見方も存在する。積極的論者も消極的論者も,実質的な租税負担者(担税者)である国民の視点から見ると,付加価値税は,所得税のように累進的な課税ができないため,非累進的(逆進的)であり,"vertical equity(垂直的公平)"が損なわれるということについて異論を唱える者は少ない。本研究では,消費税について学問上の諸類型に基づいて,一般消費税として分類される3つの単段階税(①製造者売上税,②卸売売上税,③小売売上税)と2つの多段階税(④取引高税,⑤付加価値税)の特徴について,納税モデル(tax payment model)を設定して理論的に考察し,それぞれの長所と短所を明らかにした。本研究では国民の視点から検討した結果,この消費税(付加価値税)が企業課税化していることを前提としても,またどのような類型の消費税を採用したとしても,あらゆる物品・サービスが消費税(付加価値税)相当額だけ値上がりすることは避けられず,国民に選択の余地は残されていないことが分かった。そうであるがゆえに、近い将来、消費税率を二桁代に引き上げるとしたら個人の担税力を度外視した不公平税制となり、国民の経済格差を拡大することに繋がる。それは日本国憲法の要請する応能課税原則を逸脱する恐れがあることを指摘する。1.はじめに 1.1 消費税の仕組み 1.2 日本の消費税の現状 1.3 問題意識 1.4 研究対象と研究方法等 1.4.1 研究対象 1.4.2 研究方法 1.4.3 研究の前提 2.学問上の消費課税の類型に関する研究 2.1 ‌「直接消費税(direct consumption tax)」と「間接消費税(indirect consumption tax)」 2.2 ‌「一般消費税(general consumption tax)」と「個別消費税(individual consumption tax)」 2.3 個別消費税の課税根拠(justification) 2.4 ‌「単段階一般消費税((single-stage general consumption tax)」と「多段階一般消費税(multi-stage general consumption tax)」 2.5 消費税の諸類型の分類 2.6 一般消費税を採用する意義 3.納税モデルによる単段階一般消費税の研究 3.1 基本的な納税モデルの設定 3.2 単段階一般消費税の納税モデル 3.2.1 製造者売上税(manufacturer's sales tax)の考察 3.2.2 卸売売上税(wholesale sales tax)の考察 3.2.3 小売売上税(retail sales tax)の考察 4.納税モデルによる多段階一般消費税の研究 4.1 多段階一般消費税の二つの類型 4.2 多段階一般消費税の納税モデル 4.2.1 取引高税(turnover tax o/gross receipts tax)の考察 4.2.2 付加価値税(value-added tax)の考察 5.おわりに
著者
餅川 正雄
出版者
広島経済大学経済学会
雑誌
広島経済大学研究論集 = HUE journal of humanities, social and natural sciences (ISSN:03871444)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.51-74, 2016-09

本研究の目的は,消費課税の類型を整理し,我が国の付加価値税としての消費税の特徴と法制度上の問題点を明らかにすることにある。大型間接税である消費税法の執行によって,国民の側から見て変わったことは「租税の問題に国民すべてが関心をもつことになった」ということである。我が国では,現在,消費税の再増税の時期にさしかかっている段階にあり,「消費税率の引き上げ時期と,引き上げ幅,軽減税率の適用範囲など」が国民の関心事となっている。筆者は,以前から大型間接税の導入によって何が起きているのかを考察すべきだと考えていたところである。そこで,消費税法の内容と法制度としての諸問題を,実質的な負担者である国民の立場に立って,法律の視点から分析する必要があると考えた訳である。本研究の全体を通して,「消費税法」は,一般の国民がイメージしているような簡素な法律ではないことを明らかにする。また,消費者である国民の負担する「消費税相当額」というものは,法律上の解釈では消費税ではなく物品や役務の「対価の一部」であり,消費税法における消費者には納税者としての何の権利もないという本質的な問題を提起する。国民は各人の意思とは無関係に租税法律関係から法形式的にも排除されて,多額の租税負担を余儀なくされているという法理論上の重大な欠陥について論述する。1.はじめに 1.1研究主題の設定 1.2問題意識 2.‌学問上の消費課税の類型と付加価値税の位置付け 3.日本の消費税の系譜 4.消費税法の基本的な仕組み 5.消費税法の考察 5.1課税対象 5.2課税標準 5.3課税時期 5.4課税期間 5.5消費税率 5.6納税義務者 5.7税の累積排除方式 5.8税の最終負担者 5.9免税制度(輸出免税制度) 5.10免税事業者 5.11簡易課税制度 5.12非課税規定 5.13不課税取引 5.14総額表示方式 5.15帳簿方式 5.16地方消費税 6.おわりに
著者
餅川 正雄
出版者
広島経済大学経済学会
雑誌
広島経済大学研究論集 = HUE journal of humanities, social and natural sciences (ISSN:03871444)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.29-54, 2018-09

本研究では,最初に,遺産分割制度の3つの理念と4つの前提について考察した。遺産分割の理念としては,「公平」・「自由」・「安定」の三つがある。そして,遺産分割を実行するためには,次の4つの前提(premise)が確定していなければならない。遺産分割の第1前提として,「遺産分割の当事者が確定していること」が必要である。第2前提として,遺産分割の対象となる「相続財産の範囲が確定していること」が必要となる。第3前提として「遺言書の有無を確認していること」である。第4前提として,遺産分割の基準となる「各相続人の具体的相続分率が確定していること」である。本論では,この4つの前提のうち,第1前提の遺産分割の当事者の確定に焦点を当てて,次の5つの問題について検討を加えた。第1に,「遺産分割の当事者は,法定相続人だけなのか?」を考察した。遺産分割の協議に参加する当事者は,法定相続人だけではなく,共同相続人に準ずる当事者として,被相続人の書いた『遺言』によって遺産を贈与されるいわゆる受遺者(=割合的包括受遺者)や相続権の譲受者なども含まれることを明らかにした。第2に,「包括遺贈と特定遺贈の長所・短所は何か?」について考察した。「遺贈」とは,遺言書を書くことによって,相続財産を法定相続人以外にも与えることである。包括遺贈は,財産構成が変化しても対応できるという長所があるが,権利だけでなく義務(借金の返済義務)も課すことになるという短所がある。特定遺贈の長所は,借金などのマイナスの財産を引き継がないことであるが,短所は財産構成の変化に対応できないということにある。ただし,本研究では,遺言方式等についての詳しい内容の考察は割愛した。第3に,「遺産分割協議が不調に終わった場合にどうなるのか?」を考察した。多くの相続では,当事者間で遺産分割の話し合いが成立するため,争いは発生しない。相続人間で分割内容の合意が成立しなかった場合は,家庭裁判所での「調停」ということになる。多くの相続争いはこの調停によって解決する。それゆえに,それ以降のことは国民にとって関心が薄いと言える。本研究では,この調停で解決しなかった場合には,自動的に「審判」手続きとなることや,その審判に不服があるときには,高等裁判所での「審理」で最終決着するため,相続争いは,最高裁判所に持ち込まれることはないことを明らかにした。第4に,「相続人の選択権の保障はどうなっているのか?」を考察した。具体的には,相続の承認と相続放棄の区分について検討した。相続人が遺産を相続するか放棄するかの選択権は,3か月の熟慮期間が設定されている。筆者は,この熟慮期間は現実の相続を想定するならば,12か月程度に伸ばすべきだと考えている。第5に,「相続人の存否が不明のときはどうするのか?」という問題について考察した。相続人を探索しながら,同時に相続財産を管理清算する手続きを進めるために,相続財産を法人と擬制し,家庭裁判所は利害関係人又は検察官の請求によって,そこに「相続財産管理人」を選任し(民法第952条),相続人が出てくれば相続人に承継させることになっているが,相続人や特別縁故者がいない場合,最終的に国庫に帰属することを整理した。1.はじめに 1.1問題意識 1.2研究の前提 1.3筆者の立場 2.遺産分割の理念についての考察 2.1民主主義の私法原理 2.2遺産分割の3つの理念についての考察 2.2.1「公平」……相続人の間の公平性を確保する 2.2.2「自由」……相続人の自由意志を尊重する 2.2.3「安定」……遺産分割の安定性を確保する 2.2.4筆者の見解 3.遺産分割の前提についての考察 3.1遺産分割を実行するための4つの前提 3.2相続当事者の確定 3.3筆者の見解4.相続の開始から遺産分割の終了までの流れ 4.1『遺言書』の有無と遺産分割の指定の有無を確認 4.2当事者全員の合意に基づく「遺産分割協議書」の作成 4.3家庭裁判所での遺産分割調停の手続き 4.3.1調停委員2名が調停室で双方の言い分を聞いて調整 4.3.2調停委員は独立した公平な立場で客観的に判断 4.4家庭裁判所での審判手続きは訴訟と同じようなもの 4.5高等裁判所での審理 4.6「司法統計」から見るえてくる相続争いの現実 4.7筆者の見解 5.遺産分割当事者の確定についての考察 5.1共同相続人とは法定相続人のこと 5.2相続人に準ずる当事者の存在確認 5.3その他の当事者 5.4筆者の見解 6.包括遺贈についての考察 6.1包括遺贈の長所としての財産構成の変化対応性 6.2包括遺贈の短所としての負債の継承 6.3配偶者と一親等の血族以外は相続税額の2割加算 6.4筆者の見解 7.特定遺贈についての考察 7.1特定遺贈の長所としての負債の不継承 7.2特定遺贈の短所としての財産構成変化への対応力の弱さ 7.3筆者の見解 8.当然相続主義と相続人の選択権の保障についての考察 8.1民法で当然相続主義が採用されている理由 8.2相続人の選択権を保障する理由 8.3相続人の選択権は3か月の熟慮期間内に行使 8.3.1原則としての「単純承認」は意思表示不要 8.3.2相続人全員が共同して選択する「限定承認」 8.3.3相続の効果が遡及的に消滅する「相続放棄」 8.4限定承認の申し立て 8.5相続放棄と相続分の譲渡の違い 8.6筆者の見解 9.相続人の不存在と相続財産法人についての考察 9.1相続人が存否不明の場合の相続財産の管理・清算 9.2相続財産法人の成立と相続財産管理人 9.3筆者の見解 10.おわりに
著者
餅川 正雄
出版者
広島経済大学経済学会
雑誌
広島経済大学研究論集 (ISSN:03871444)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.65-84, 2011-09

はじめに 1. いじめの6層構造モデル 2. いじめ首謀者への指導 2.1 いじめ事実の確認 2.2 いじめの動機解明 2.3 苦痛に共感する指導 2.4 いじめの反省と謝罪 2.5 いじめの再発防止 3. 加担者・観衆・援護者への指導 3.1 いじめ加担者に対する指導 3.2 いじめ観衆に対する指導 3.3 いじめ援護者への指導 4. 子どもに対する保護者の指導 4.1 いじめ事実の確認 4.2 子どもの心情理解 4.3 いじめ行為の責任 4.4 いじめ行為の反省と謝罪 4.5 生活の改善指導 5. いじめを見た時の子どもの心理と行動 5.1 いじめを見た時の子どもの心理 5.2 いじめを見た時の子どもの行動 6. いじめ傍観者の心理とその指導 6.1 いじめ傍観者の心理 6.2 いじめ傍観者への指導 6.3 傍観者のいない集団構造 おわりに