著者
長野 ひろ子
雑誌
経済研究所年報 (ISSN:02859718)
巻号頁・発行日
no.49, pp.277-298, 2017-10-10

『富岡日記』は,官営富岡製糸場の伝習工女和田(旧姓横田)英が,後年になり自らの製糸工女時代を回顧した記録である。本稿では,『富岡日記』に関し2 つの問題を提起した。1 つは,旧武士身分に属する英が,家を離れ工場労働に従事することをなぜ世間が許容し本人も納得したのかということ,他の1 つは,女工問題が社会問題として取り上げられていた明治末~昭和初期にあって,当時エリート一族の一員であった英が何故『富岡日記』を刊行したのかということである。前者については,英が少女時代を過ごした江戸時代における衣料生産と女性との関係性ならびに衣料生産を女性性と結び付けるジェンダー・イデオロギーの存在を明らかにし,同時に維新変革期のジェンダーの再構築過程におけるジェンダー秩序の変容として解釈を加えた。後者については,英が,『女工哀史』的言説に満ち溢れた現実社会への理解とは異なった位相において日記を執筆したとの見解を提示した。

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長野 ひろ子 -  衣料生産と日本女性 ――『富岡日記』を中心に―― https://t.co/jqzg1O847D

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