著者
奥中 康人 オクナカ ヤスト
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要
巻号頁・発行日
vol.18, pp.65-90, 2018-03-31

群馬県では、公設消防組が設立された1894年に、広くラッパが配備され、組織的な練習もおこなわれていた。ほぼ同時期に、消防用のラッパ譜も制定されていたという。本稿は、1890年代~1940年の7種類の消防ラッパ譜(「喇叭ノ符」(1895)、「喇叭符」(1895)、『喇叭符號手帳』(1896~97)、『消防の栞』(1908)、『消防喇叭音譜』(1929)、『消防喇叭教本』(1938)、『警防喇叭教本』(1940))の内容を分析することによって、近代群馬にどのような音楽が鳴り響いたのかを明らかにすることを目的としている。群馬県の消防ラッパ譜に収録された楽曲は、消防のために作られたオリジナル曲と、軍隊のラッパ譜によって構成されている。軍隊ラッパ譜から転用された曲の多くは、1885年に刊行された『陸海軍喇叭譜』とその改訂版を典拠としているが、1890年代のラッパ譜の中には、1885年以前に陸軍が使っていたフランスのラッパ譜も含まれている。1920年代には、群馬のオリジナルのラッパ文化がわずかに芽生えようとしていたが、1938年のラッパ譜では、ほとんどが『陸軍喇叭譜』の曲で占められることとなった。

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