- 著者
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小川 麻衣
- 雑誌
- 文化学園大学・文化学園大学短期大学部紀要 (ISSN:24325848)
- 巻号頁・発行日
- vol.49, pp.49-56, 2018-01-31
ファッションは近代産業社会の成立とともに誕生したジェンダーを映しだす記号的役割を果たしてきた。社会の変化とともにジェンダーが恣意的に作られたものであり、その構造や意味を問い直そうとする議論や研究がみられるようになると、それらに関わりを持つファッションも同様に議論し直されはじめた。本稿では、1990 年代に流行した〝フェミ男〟をジェンダー概念の観点から考察を行った。〝フェミ男〟の現象は社会の先端を走るジェンダー意識の変化をいち早く取り入れたファッションであったと言えるが、新しいジェンダー意識と現状を守ろうとする帰来の意識の中で揺らぐ姿が写し出されていた。しかし、「男らしさ」というジェンダー既定に新しい意味内容を加えたことは、単なる一過性の流行だけではなく、ジェンダー概念に影響を与える事例のひとつと言える。ジェンダーは時代の変化と共に揺らぎ始めているが、ファッションにおける男女差はいまだに存在し続けており、大きな変化が訪れることは難しいかもしれないが、ファッションをする行為はジェンダーを壊すきっかけにも再構築するきっかけにもなっている。