著者
井上 勝生
出版者
京都大學人文科學研究所
雑誌
人文學報 (ISSN:04490274)
巻号頁・発行日
vol.111, pp.1-65, 2018-03-30

特集 : 日清戦争と東学農民戦争Special Issue: the Shino-Japanese War and the Donghak Peasant War日清戦争の際に, 日本軍は, 朝鮮各地において, 数千人, 数万人の勢力をもって抗戦する朝鮮農民軍に対して, 包囲殲滅作戦を展開した。第2次の東学農民戦争, または甲午農民戦争, 韓国では東学農民革命と呼ばれる。当時の日本公使館が農民軍指導部文書を組織的に奪取し, 日本軍の公式日誌, 「陣中日誌」も重要部分欠落などのために, 現在も東学農民戦争の全体像は明らかでない。東学農民軍を殲滅した大隊の一つが, 後備第19大隊である。その第1中隊に従軍した徳島県出身の一兵卒の「従軍日誌」に, 同大隊が実施した殲滅作戦最前線の実況が記録されていた。本稿前半では, 京畿道利川の市内と近郊, 忠清道可興北の平野にある東幕里, 忠清道清風北の盆地, 城内里で展開した作戦を, 現地調査にもとづいて検証した。当初から殲滅作戦として実施され, 銃撃戦も早くから戦われた。農民軍を捕縛, 銃殺し, 農民軍の拠点村落を焼き払う作戦であった。いわゆる北接農民軍が, 主力の全羅道の南接農民軍へと合同, 参戦したことも見聞して記されていた。後半では, 最大の激戦と言われてきた公州戦争の, その東側, 錦江大渓谷における文義・沃川戦争が, 公州戦争に劣らない大戦争であったこと, 南原においては, 農民軍拠点の城山と民家を重ねて焼き払う作戦を展開したこと, また南西部海岸地域における討滅作戦が, 拷問, 銃殺, 焼殺, 村の焼き払いと, いっそう苛酷に展開したことなどを現地調査も行って解明した。結びでは, 後備部隊に徴兵された「貧困な兵士」群, 苛酷な作戦における士官と兵士の社会史などを検討した。During the Sino-Japanese War, the Japanese Army aimed to annihilate the resisting Donghak Peasant Army. Based on our detailed fieldwork in Korea, we were able to reenact the military operations of the Japanese Army against the Peasant Army, as described in the Soldiersʼ Campaign Journal 従軍日誌〕.Thus, we have verified the fact that the Japanese campaign was indeed one of complete annihilation, carried out in the city, as well as in the plains, hills, valleys, and mountain castles, by capturing and killing the members of the Peasant Army and burning their villages.

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「東学農民戦争,抗日蜂起と殲滅作戦の史実を探究して」 https://t.co/afC2eDvTOB ”農民軍拠点の城山と民家を重ねて焼き払う作戦を展開したこと, また南西部海岸地域における討滅作戦が, 拷問, 銃殺, 焼殺, 村の焼き払いと, いっそう苛酷に展開したことなどを現地調査も行って解明した。” https://t.co/56XfXmahf2
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