- 著者
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濱西 誠司
- 出版者
- ヒューマンケア研究学会
- 雑誌
- ヒューマンケア研究学会誌 (ISSN:21872813)
- 巻号頁・発行日
- vol.9, no.2, pp.19-23, 2018
黄体期に限局して生じる強い眠気と過眠は月経前過眠症と呼ばれている.黄体期の眠気は軽症例も含めると多くの女性が経験する症状である1 )- 3 ).日中の強い眠気は女性の活動性を低下させるだけでなく,作業効率を低下させヒューマンエラーのリスクを増大させる要因となる.また,月経関連症状の多くは閉経期まで繰り返されるため,重篤な症状は女性の生活の質を低下させる要因となる.そのため,生活に支障を来たすような重症例では薬物療法の適用となり4 ),軽度-中等度の症状に対してもセルフケアによって症状の緩和を図っていくことが生活の質の向上のために重要であると考える.しかし,月経前の眠気の改善に有用なセルフケア法は確立されていない. 黄体期には中途覚醒が増加する一方,レム睡眠や深い睡眠の指標である徐波睡眠が減少するなど睡眠の質が低下することが報告されており,睡眠の質の低下は眠気の増強に影響している可能性がある1 ),5),6).円滑な入眠と睡眠の維持にはメラトニンの働きによる夜間の体温低下が不可欠であるが,黄体期にはプロゲステロンの影響で熱放散が阻害されるため,夜間の十分な体温低下が生じない7 ).このように,黄体期の生理的な体温上昇が睡眠の質を低下する一因と考えられており,夜間の円滑な体温低下を促進することで黄体期における睡眠の質および日中の眠気を改善することが期待できる. 暑熱環境では熱放散が困難となることで高体温が維持されるため,中途覚醒の増加など睡眠の質の低下が認められるが,睡眠中に頭部を冷却することで中途覚醒が減少することが複数の研究で報告されている8 )- 9 ).そこで,暑熱環境と同様に熱放散量が低下する黄体期においても,睡眠中に頭部を冷却することで体温低下と睡眠の質の改善に寄与できる可能性があると考えた.本研究では睡眠時の頭部冷却が黄体期における睡眠の質や日中の眠気に及ぼす影響について検討することを研究目的とする。