著者
山﨑 晶子 濱西 誠司 泊 祐子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.261-269, 2023 (Released:2023-10-03)
参考文献数
40

目的:3歳未満の子どもを育てる父親のコペアレンティングに妊娠期から出産後に形成される父親像が及ぼす影響を明らかにする.方法:対象者は1,621人であった.先行研究よりコペアレンティングとの関連が示唆された項目と「親になる移行期の父親らしさ尺度」を独立変数,「日本語版コペアレンティング関係尺度:CRS-J」を従属変数とし,独立変数を段階的に投入した3つの重回帰モデルを作成した.結果:全てのモデルで有意な回帰性が認められた(p < .01).ただし,CRS-J得点との有意な関連は,「子どもの存在から沸き立つ思い」「父親意識の高まり」「妻への思い」の得点にのみ認められた.結論:妊娠期からの父親像の形成状況が,乳幼児期のコペアレンティングに影響を及ぼしている可能性が示された.特に,独立変数の中で最も高く影響していたのは「妻への思い」であり,妊娠中の良好な夫婦関係がコペアレンティングに影響を及ぼす重要な要因となっていることが示唆された.
著者
濱西 誠司
出版者
ヒューマンケア研究学会
雑誌
ヒューマンケア研究学会誌 (ISSN:21872813)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.19-23, 2018

黄体期に限局して生じる強い眠気と過眠は月経前過眠症と呼ばれている.黄体期の眠気は軽症例も含めると多くの女性が経験する症状である1 )- 3 ).日中の強い眠気は女性の活動性を低下させるだけでなく,作業効率を低下させヒューマンエラーのリスクを増大させる要因となる.また,月経関連症状の多くは閉経期まで繰り返されるため,重篤な症状は女性の生活の質を低下させる要因となる.そのため,生活に支障を来たすような重症例では薬物療法の適用となり4 ),軽度-中等度の症状に対してもセルフケアによって症状の緩和を図っていくことが生活の質の向上のために重要であると考える.しかし,月経前の眠気の改善に有用なセルフケア法は確立されていない. 黄体期には中途覚醒が増加する一方,レム睡眠や深い睡眠の指標である徐波睡眠が減少するなど睡眠の質が低下することが報告されており,睡眠の質の低下は眠気の増強に影響している可能性がある1 ),5),6).円滑な入眠と睡眠の維持にはメラトニンの働きによる夜間の体温低下が不可欠であるが,黄体期にはプロゲステロンの影響で熱放散が阻害されるため,夜間の十分な体温低下が生じない7 ).このように,黄体期の生理的な体温上昇が睡眠の質を低下する一因と考えられており,夜間の円滑な体温低下を促進することで黄体期における睡眠の質および日中の眠気を改善することが期待できる. 暑熱環境では熱放散が困難となることで高体温が維持されるため,中途覚醒の増加など睡眠の質の低下が認められるが,睡眠中に頭部を冷却することで中途覚醒が減少することが複数の研究で報告されている8 )- 9 ).そこで,暑熱環境と同様に熱放散量が低下する黄体期においても,睡眠中に頭部を冷却することで体温低下と睡眠の質の改善に寄与できる可能性があると考えた.本研究では睡眠時の頭部冷却が黄体期における睡眠の質や日中の眠気に及ぼす影響について検討することを研究目的とする。
著者
濱西 誠司
出版者
ヒューマンケア研究学会
雑誌
ヒューマンケア研究学会誌 = The Journal of Japanese Society of Human caring Research (ISSN:21872813)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.59-61, 2014-03-31

月経前に繰り返し生じる精神的あるいは身体的症状をP M S(月経前症候群)といい、特に精神症状が強く生じる重症例はP M D D(月経前気分不快障害)と呼ばれている。P M S / P M D Dは「人に対して不機嫌な態度をとる」「人にあたる」などの攻撃的な行動がみられることも多く、家庭や職場における対人関係に支障をきたすことがある。近年、精神症状に対してはS S R Iの有効性が確立してきており、身体症状に対しては漢方療法や低用量ピルが選択されることもある。「2012年P M S(月経前症候群)に関する男女の意識調査」(小林製薬)によると、20代以上の女性85.9%がP M S を経験していると報告されている。また、90%以上の女性がP M Sを経験したことがあるという報告もあり、P M Sは多くの女性に共通した問題であることがわかる。しかし、P M S は多くの女性が経験し、月経発来とともに症状が軽減ないし消失するため、疾病としての認識は低く、日常生活や社会生活が困難であるにも関わらず医療機関を受診していない女性も多数存在し、P M S / P M D Dの潜在的な患者は約18万人に及ぶと推定されている。また、同調査では働く女性の約1割がP M SあるいはP M D Dの症状のために仕事を休むことがあると報告されており、P M S / P M D D に対する支援は労働衛生の観点からも重要と考えられる。そこで本研究では、若年女性のP M S / P M D Dの重症度や治療に関する知識およびニーズに関する調査を実施し、P M S / P M D D に関する支援法を開発するための基礎的な知見を得ることを主な研究目的とする。